3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


ジェフ・ベゾスは「鎌を持った民衆」の夢を見るか? 壊れた社会で私たちが盗むもの

今日のピックアップNYT記事:‘The Rich Don’t Play by the Rules. So Why Should I?’

「金持ちはルールを守らない。だったら自分も。」という、ちょっと過激なタイトルの対談を紹介します。

ゲストはHasan PikerとJia Tolentinoのお二人です。

Hasan Piker: 左派寄り、資本主義批判や格差の話をよくするネット政治解説者

Jia Tolentino: The New Yorker のライター。「自己認識と社会の歪み」みたいな話が得意

テーマを一言でいうと、「アメリカの格差社会がもたらす倫理観のゆらぎ」。ネトフリのパスワード共有、有料記事の抜け道閲覧、大手企業(ホールフーズ等)からの万引きといった、小さな盗み(micro-looting)はどこまで許容できるかのか?抵抗としての小さな不正の是非をゲストに問うことから始め、アメリカにおける「社会的ルールの死」を考えます。

Piker 氏は過激な言説で知られているようで、ここでも吠えています。「貧乏人が盗みを犯せば犯罪になるのに、貧乏人から盗むと金持ちになれる、それがアメリカ。」大企業は労働者の搾取という形で盗みまくっているので、micro-looting 大いに結構、というスタンス。ただし本人は、友達のポケモンカードを盗んで父親にシメられたトラウマから、万引きは絶対にできないそうです。発言は大胆なのに意外に小心者で人間くさいですね。

Tolentino 氏はもっと内省的で、「システムの歪みに自覚的な共犯者」としての諦念があり、そこからの脱出を模索している雰囲気です。ホールフーズでの万引きについては、「道徳的な罪としても、政治的な直接行動としても、どちらも大した意味はない」と言っています。万引きみたいにスケールの小さいことやっても誰にも見えないし何も変わらない。そんな元気があったら労働組合でも作ろうか?と地味でタフな集団行動を推奨しています。

個人飲食店での食い逃げは?と聞かれ、二人とも「それはない」。Piker氏、食い逃げを見かけたら、自分がその人の分も払うそうです。彼にとって、飢えたる人民の食い逃げはジャン・バルジャン枠。ただし庶民の店主が損しないように、そこは自分が払うと。さすが左翼。

「富裕層にやり返せ」的な心理の過激化を表すものとして、ユナイテッドヘルスケアCEO殺害の件が挙げられています。本来、殺人事件は非難されるべきものですが、アメリカの医療保険制度(高額な費用や支払拒否)に苦しむ多くの人々から、CEO殺害犯人を義賊のように扱う反応が広く見られました。

医療保険の理不尽さに苦しんでいる庶民は、ひそかに「ざまあ」と思い、殺人事件が「仇討ち」だったかのように受け入れられてしまう。Piker 氏は人々の怒りに共感しながらも、アメリカの倫理観はかなりヤバい状態にあると危惧し、Tolentino 氏は「民主党、なぜこれを国民皆保険への推進力に変えられない?」と政治的無策を嘆いています。

富裕層から盗み民衆に還元する義賊の話ならば、ロビン・フッドからネズミ小僧次郎吉まで、古今東西いろいろあるわけですが、ゲスト二人とも、「富裕層に小さくやり返す」ことは肯定しながらも「搾取されている怒りはもっと建設的に使おうよ」で一致しています。

個人的に、ジェフ・ベゾスとかイーロン・マスクの顔を見るたびに、「この人たち、民衆が鎌を持って自分たちを殺しにくる悪夢とか見ないのかなあ」と思ってしまうのですが、それを言うと「あんた歴史小説の読みすぎ」と言われます。

これはつまり「そんなこと起こるわけないし」な感覚ですよね?でも実際に「マイクロ百姓一揆」はあちこちで起きているわけで。「今時、一揆なんかおこるわけない」という無意識が富裕層による構造的略奪を許しているような気もします。

自分は庶民のつもりでいますが、全世界を「持ってる人」と「持ってない人」に二分したら、多分持っている側に分類されるんじゃないかと。「庶民のつもり」の人も、ちょっと怖がった方がいいのかもしれません。



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新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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