3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


超鈍足のためのランニング・クラブへようこそ

今日のピックアップNYT記事:One Man’s Mission to Make Running Everyone’s Sport

俺的記事まとめ

マルティヌス・エヴァンズ氏は、ランニングのオンラインコミュニティ Slow AF Run Club(超鈍足ランニング・クラブ)を主宰している。世界中に1万人のメンバーを抱え、雑誌「ランナーズワールド」「メンズヘルス」の表紙を飾った経験を持ち、アディダスの広告にも起用されている。

Slow AF クラブのアイデアは、2018年のニューヨークシティマラソン参加中に生まれた。マンハッタンへ入るクイーンズボロ橋近くのコースを走っていたときに、沿道から「お前遅いんだよ、帰れ」と罵声を浴びた。タイムは8時間超え、トップに6時間遅れでゴールしたエヴァンス氏は、沿道からの侮辱を思い出し、この悔しさを逆手にとってやろうと決心。次のレースでは、クイーンズボロ橋の罵声 “Slow AF”というフレーズと、笑顔のカメをデザインしたシャツを着て走った。インスタグラムのフォロワーたちから、「このシャツ欲しい」というリクエストが殺到、2019年にSlow AF ランニング・クラブが発足した。

ブルックリン在住のエヴァンス氏は、今ではランニングコーチの資格をとり、ランニングというスポーツから垣根を取り払う運動に貢献している。エヴァンス氏のメッセージはシンプルだ。「どんな体型の人だって走れる。」

デトロイトで自動車整備工の両親のもとに生まれた黒人のエヴァンス氏は、本人も周囲の人々も、ランニングは白人のスポーツだと思っていたという。子供の頃から太り気味で「デブのマーティ」と呼ばれ、ジュニアフットボールチームの入団テストを受けた際、コーチに黒いゴミ袋を着せられ、「汗をかいて痩せなさい」と言われた。

高校ではフットボールチームへの入部を果たし、大学では運動科学を専攻。「運動について勉強して痩せれば、認めらる」と思っていた。2012年に紳士服店に就職し、売り場で様々な体型の男性と接してきた経験が、後に思いがけずフィットネスインフルエンサーとしてのキャリアに役立つことになる。

長時間に渡る立ち仕事のせいか、エヴァンス氏は腰痛に悩まされるようになった。整形外科を受診したところ、「太りすぎです。体重を減らさないと死にますよ」と医師に言われた。このとき、エヴァンス氏は、悔し涙を飲み込んで医師に向かって宣言した。「マラソンを走って見せます。」あなたがマラソンなんか走ったら死にます、と医師は一笑に付した。整形外科からスポーツ店に直行し、ランニングシューズを購入。あの医者を見返してやる、と心に誓った。「体重130kgだけど走ってる」と題したブログを始め、ランニングや減量の記録をつけ始めた。まもなく、見ず知らずの人々がブログを読んで応援してくれるようになった。

ランニングは楽しかった。通りがかりの人に罵声を浴びたり、警察に職質を受けるなど、嫌な思いもしたが、「苦難なしに進歩はない」と自分を励まし、走り続けた。5キロ、ハーフマラソンと距離を伸ばし、2013年には、ついにフルマラソンを完走。

ランニングは自律精神と自信、そして目的意識を与えてくれるというエヴァンス氏。その後、公衆衛生研究とデジタルデザインの学位を取得した。一時期ランニングで40キロ痩せたが、減量目的ではランの楽しみが半減すると感じ、カロリー計算はやめて、ひたすらランを楽しむことに専念した。紳士服販売で自分が成功したのは、「ありのままの自分を好きになってもらう」接客に長けていたからだと気づき、「体重130kgランナー」というブログのキャラこそ、人々に勇気を与えられるのだと悟った。

一般的に、ランニングは、ストイックなスポーツだと思われている。太っている人がランナーを自称するには、まずは痩せなければならないというプレッシャーがある。エヴァンス氏は、ランニングを始める人へのアドバイスとして、体型やスピードにこだわるランナー文化は無視して「自分は走れる」と自己暗示をかけることを勧めている。「自分にランニングなんかできるわけない」と思ってしまう場合は、その「内なる声」に名前をつけるといい。彼自身は、その「内なる批判者」を「オーティス」と呼んでいる。オーティスは、何もわかっていないアル中のおじさんだ。酔っ払いの言うことなど、聞く必要はない。

Slow AFクラブのアプリには、無料で参加できる。ルールは1つ、体重や減量についての話はしないこと。コミュニティの運営をしながら、エヴァンス氏は公的な活動も行っており、先頭集団ならぬ「後方集団」のために給水所やフィニッシュラインを維持するよう、マラソン大会事務局に働きかけたり、スポーツブランドに大きいサイズのウエアを開発するよう求めている。

走り始めて10年以上たち、フルマラソンを8回完走したエヴァンス氏の体重は、今でも130kgだ。ランナーとしての成功や健康レベルを数値で測ることはしないという。鈍足の130kgランナーとして走り続ける限り、自分と同じような「ランナーらしくないランナー」が、Slow AFコミュニティを通じて走る楽しみを発見しやすくなるだろう、と信じている。

俺的コメント

ジョギング中の人に、デブが走ってんじゃねえよ、と罵声を浴びせる人がいるという事実にまず驚いたよ。あと、黒人が走ってると職質されるって、アメリカの人種差別は闇が深い。そういえば、ジョギング中に殺された黒人の方もいましたよね。黒人が走ってんじゃねえよ、ってことですか?そんな社会だからこそ、Slow AFランニング・クラブは尊い。

俺も医者に走るなって言われたことあるっけね、医者を見返すために走ったという動機もブラボーだ。俺は5年前の10キロレースの後、オーバートレーニング状態だったらしく、心臓の調子がおかしくなって一度救急車の世話になりました。医者様は、心臓悪いのに走るとか、あんたバカなの?って顔してました。すみません。

もちろん、お医者の言うこともわかる。俺のかかりつけ医は、マラソン大会のスタートを待っているランナーの集団を見ると、人工股関節の手術を待っている人の行列に見えるそうです。エヴァンスさんは、まだ30代。今はよくても、130kgのまま走り続けていると、中高年になったときに歩けなくなるんじゃないかなあと心配する。太っていても走れるよ!というメッセージは素晴らしいのだが。

この歳で走っていますと、ランニングで鍛えられるメンタルの分野が斜めになってきます。一言でいうと「足るを知る」ですな。実は俺はラン仲間の中では一番ヘタレなランナーなのですが、それは中年なのに凄いタイム凄い距離を走っている人と比べて「ヘタレ」なのであって、一般中年人口という枠で見れば、上等です。ランナーはだいたいみんな、「自分は遅い」と思っていて、そりゃ自分より速い人がいる限り、相対的にみんな遅いのです。速い人が「自分は遅いから」と言ってて嫌味に聞こえた、というようなエピソードはラン友あるある、さふいふ煩悩から自由になるメンタルトレーニングこそ、不惑の中年に相応しく、鈍足クラブから学ぶべきことかもしれません。足るを知る者でありたい、でも記録更新も諦めたくない、という葛藤のバランス取りこそ、中高年が走り続ける醍醐味なのかもしれませんが。



About Me

新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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