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民主党、トランプ人気低下の追い風を活かせない説

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The Democrats Could Still Mess This Up

めずらしくダウさっちゃんの対談相手がリベラルの人でした。テーマは今後の民主党の路線と経済やAIの動向について。ゲストは有名テレビ司会者のクリス・ヘイズ。「左翼ですが何か?」っぽいところはあるけど、ちゃんと現実も見ている人。「理想はあれど、多数派の言うことは無視できない」という、地に足がついた感じのお話ぶりでした。

まず、選挙戦略について。トランプの人気がダダ下がりなので、民主党には追い風なはずですが、相変わらず移民・治安・経済に関しては信用されていない民主党。次なるリーダーとして誰もが思い浮かべるカリフォルニアのニューサム知事は、「ザ・リベラル」みたいな人なので、中道&浮動票層を掴みにくい。これはヒラリー・クリントンと同じ問題。

ヘイズが比較的有望な例として挙げているのは、トランプ時代に接戦州で勝っていて、民主党の危機感を語りつつ日常生活の問題にも戻せる人たち。たとえばマーク・ケリーとか。

今、リベラルのビジョンとは何なのか。ヘイズは「平等」「連帯」「人間の共同的な繁栄」という、「いかにも」な大きな理念をあげていて、ダウさっちゃんは意地悪く「今の左派って守り一辺倒じゃない? 攻めの未来像あるの?」と突っ込んできます。

ヘイズの言葉で印象に残ったのはこれ。

Does American capitalism work for the ordinary person?
The polling reliably shows people say the answer to that question is: No. Profoundly, no.

アメリカ資本主義は、「ふつうの人」のために機能しているか?答えは圧倒的にノーである。意識調査を見ても、みんなそう思っていることがわかる。(特に若い人たち。)

言い換えると、もう誰もアメリカンドリームなんか信じていないってことですが、これをどうやって「攻めのビジョン」に翻訳するのか?ポピュリズムが「リベラルのせいでアメリカンドリーム終わった」というわかりやすいストーリーを掲げる中、いったいどうすれば?

富裕税というアイデアはウケがいい。でも、それだけで全部解決するほど世の中は単純ではありません。Tax the Rich (金持ちに課税しろ)というビジョンはわかりやすいけど、「金持ち」には貧乏人から見た中間層も含まれます。そして中間層に「あなたももっと払ってね」と言うと絶対に嫌われる。

市場が生む格差を、税と再分配で修正する、というやり方には限界がある、とヘイズ。あとから分配をやり直すことだけではなく、そもそも格差が広がりにくい経済を作らなきゃなんだけど、そこをどう制度に落とすかが問題。

対談の後半ではAIの話が出てきます。左派リベラルのAI観は、基本的にかなりネガティブなようです。「またシリコンバレーのバブルでしょ」と思っている人多し。最近のテックは、なんでもかんでも「革命」と言っては、あとで「いやそれ、そこまででもなかったですね」ということが多い(例:メタバース)ので、まあ気持ちはわかります。しかしヘイズはAIは脅威だと本気で心配しています。

理由は3つあって、まずはAIが知的財産ドロボーになっていること。いろんな人の作品が無断で吸い上げられ学習され、タダの類似品が出回る。これは左派から見ると露骨な価値の収奪。

2つ目は、権力の集中。ほんの数人のテック富豪が、巨額の資本をどう投じるか決め、社会の未来を左右している。左派は昔からこういう状況が大嫌い。

そして一番大きな理由が、中産階級のホワイトカラー職が破壊される不安。これまで自動化の被害を受けたのは、主に工場労働や現場仕事でしたが、今度は中間層の仕事が狙われています。その層がごっそりAIに削られたら、アメリカはもっと怖い状況に陥ります。

アメリカから工場が消滅しはじめたころ、「間違っている」と口にした人はたくさんいました。でも、「こうしないとグローバル競争で生き残れない」「これが社会の進歩だから仕方ない」と世の中は抵抗しませんでした。その結果がアメリカンドリームの終了。

ヘイズはAIデータセンター反対運動のような抵抗も、「回転する歯車にバールを突っ込む」的な方法として有効では?と言っています。かなり強烈な危機感が伝わってきます。

この対談を聞いていて感じたのは、いまのリベラルは、正しき理想や壮大なユートピアを語る前に、これ以上人間の暮らしを壊すなと思っている、ということ。市場がそう言うから、技術がそう進むから、世界がそうなっているから、だから受け入れろ。この言い方で進んできたものが、この30年あまりでどれだけ多くのものを空洞化させたか。

人間が人間として生きられる社会を守るにはどうすれば?そう言われると、まだ見たことがないものを想像するよりも、30年前を思い出すほうが簡単なんだよね。でもそれは中高年の発想です。アメリカンドリーム、デフォルトで機能していない状態に生まれた若い人たちに「俺らが若い頃は良かった。あの時代に戻ろう」と語る愚かしさに、まずは気づかないと。その「良かった時代」の副作用が今の状況なので。



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新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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