3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


「異論が言える場」の失敗: UATXと大学の教義化

今日のピックアップNYT記事:The Most Important Question is “What if I’m wrong?”

大学は、人の視野を広げもするし、逆に狭めもする。好奇心を育てる場所にもなれば、もともと持っていた信念を強化し、異論を遮断するエコーチェンバーにもなりうる。学生は白紙の存在ではなく、多くは入学時点ですでに強い政治的・宗教的信念を持っている。それでも、良い教師は学生にこう促す。「前提を疑え」「新しい事実により、考えが変わる可能性があるか自問せよ」と。

だが現実には、大学が謙虚さではなく確信と傲慢を育ててしまうことの方が多い。その結果が、今日のアメリカ社会における深刻な分断と敵対意識だ。左派的なイデオロギーが主流となったキャンパスでは、学生の多くが「本音を言えば友人を失う」「成績に響く」と感じ、主流と異なる意見を口にできない。これは過激思想の問題ではなく、ごく常識的な意見にも及んでいる。

大学の左派教条化への対抗として誕生したのが、2021年に設立されたオースティン大学(UATX)だった。創設メンバーには右派だけでなく、スティーブン・ピンカーやジョナサン・ハイト、ACLU元代表ナディーン・ストロッセンなど、表現の自由と開かれた探究を重視する古典的リベラルが名を連ねていた。これは既存の名門大学への強烈な告発でもあった。

しかしUATXは次第に分裂する。2025年、理事の一人が教職員に「反共産主義・反社会主義・反アイデンティティ政治・反イスラム主義」という四原則への同調を求めたとされ、支持者の多くが離脱した。UATXは既存の名門校が抱える病理を是正するものとして構想されたはずだが、左派・右派が入れ替わっただけの「鏡像」になりつつあるようだ。

問題の本質は左右の政治的対立ではない。人間として、反対意見をリスペクトできるかどうかである。筆者は宗教大学とハーバード・ロースクールという二つの「信念の強い」場所を経験したが、後者の方がより思想的に均質で、活動家養成所のように感じた。自分は正義の側にいると信じた瞬間、自由な言論は不要になる。

優れた大学が育てるのは、確信ではなく好奇心だ。信念はあっていい。ただし、謙虚さというブレーキがかかっていなければ危うい。「私は不完全だ。間違っているかもしれない」という認識こそが、人の心を開き、対話を可能にする。

民主主義を守るために、大学が若者に植え付けるべき最も重要な問いはただ一つだ。
「もし自分が間違っているとしたら?」

俺的コメント

スティーブン・ピンカー、ジョナサン・ハイト、ナディーン・ストロッセンの名前が並んでいるのは、右でも左でもなく「異論が言える場」を守ってきた人たちが集まった大学ということ。その顔ぶれが離れてしまったのなら、あまり意味がない感じ。「異論が許されないWOKEで不自由な大学」が「異論が許されない右翼で不自由な大学」にひっくり返っただけかもしれない…残念すぎる。

それにしても、「宗教大学よりハーバード大学のほうが思想的に均一」って、けっこう強烈な証言です。ハーバードのような「多様性と知性の殿堂」は、表向きは中立に見えますが、実際には正解がすでに共有されていて、それに異議を唱える人は「啓蒙すべき対象」になってしまうのかもしれません。多様性を教義にした途端に、考え方の多様性が禁止されるという皮肉な現象です。

先日の富裕税の話の続きとして、こんな記事を書きました。

WOKEとテックは反省のないところが似ている、と書きましたが、アメリカの将来は左派WOKEと右派テック富豪が what if I am wrong? と自問できるかどうかにかかっていると感じています。

テック富豪が「自分が間違っていた」と反省するのは金儲けの文脈のみ。「これ儲からないかも?」「市場に評価されないかも?」という場面では恐ろしく柔軟。でも倫理や公共性の文脈では、「自分が間違っている可能性」には目が向かない。意図的に反省しないというよりは、反省回路が搭載されていないという仕様による欠陥。

対してWOKEは、もともと「見えていなかった不正」に気づくところ(=反省)から出発しており、大学の自由を蝕むに至った経緯を反省するポテンシャルはあるはず。しかしトランプ政権下のDEI予算削減など、力任せに潰されたWOKEは敗者の位置に押し込められ、自ら what if I am wrong? と問う機会を奪われているのです。

どっちにしろ、よくない。



About Me

新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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