3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


チャーリー・カーク以後のMAGA:分裂を防ぐ芯はどこに?

今日のピックアップNYT記事:Is Anything Holding MAGA Together?

アメリカ右派の内部分裂が進んでいるが、MAGAの結束を守ることはできるのか?チャーリー・カーク亡き後、彼のポッドキャストを引き継いだアンドリュー・コルベットと、NYT保守コラムニストのロス・ダウサットの対談。コルベットの主張は以下の通り。

MAGAを結束させているものは、単一の思想や指導者ではなく、「裏切られたという感覚」を共有する人々を、いかに秩序ある政治に回収できるか、という一点にある。

現在の右派を最も強く束ねているのは、移民問題である。これは人種や宗教の問題ではなく、「自分たちが育った国の感触が失われていく」という共同体的な不安に直結している。大量かつ無秩序な移民流入は、治安、住宅、公共サービスを圧迫し、その影響を受けるのは白人だけでなく、合法移民や移民コミュニティも同様である。彼らは、必ずしも全員が「反・移民規制」ではない。MAGAの強硬な移民政策は移民票を失うどころか、むしろ秩序と公平を求める移民層を引き寄せている。

一方、陰謀論は、MAGAを結束させる力にも、分裂させる力にもなり得る危険な要素である。制度やメディアへの不信が極まるなかで、「真実は隠されている」と人々が感じるのは理解できる。しかし、事実の断片を恣意的につなぎ、反ユダヤ主義や裏切りの物語へ滑り落ちる陰謀論は、政治運動を内側から腐食させる。右派自体が事実を重んじ、荒唐無稽な陰謀論を自浄する責任がある。ただし、陰謀論の完全否定ではなく、選別が必要である。

右派政治の最終的な「錨(アンカー)」となるのが、キリスト教的信仰である。チャーリー・カークにとって信仰は、政治的成功のための装飾ではなく、恐怖や憎悪、過激化から自分を守るための土台だった。信仰は、反ユダヤ主義や過剰なラディカリズムへの歯止めになり得る。キリスト教が説く「愛」は、けして甘さと同義ではない。アメリカの教会は女性化し弱くなったが、法執行や国境管理のような厳しさも、共同体を守る愛の一形態である。

イスラエル問題については、「踏み絵化」を止めることが必要だ。イスラエル支持はMAGAの参加条件ではなく、「アメリカファーストとは何か」をめぐる象徴的な議論の場になっているにすぎない。若い世代はイスラエルの存在を否定しない一方で、制限なき支援、アメリカが戦争に巻き込まれることには懐疑的であり、その違和感を保守政治から排除すべきではない。

MAGAを結束させているのは、大衆の怒りそのものではなく、怒りを「国家・秩序・帰属」という枠組みに収めようとする試みである。それが失敗すれば、怒りは陰謀論や憎悪へと流れ、成功すれば、粗削りではあっても一つの政治的共同体として持ちこたえるはず。

俺的コメント

ザ・穏健派保守のダウサットおじさんと、暗殺されたチャーリー・カークの使命を引き継いだ側近の対談です。MAGAを「狂気」や「扇動」で一括りにせず、なぜ人がそこに引き寄せられるのかを、感情と構造の両面から語っているところが良い。

惜しいところは何箇所かあります。まず、「キリスト教会の女性化=弱体化」という言葉遣い。政治的な戦いを避けてきた教会への苛立ちはわかりますが、それを「女性化」と呼んだ瞬間に話が雑になるんですけど?「女性性=ケア、非暴力、配慮」はキリスト教の核心でもあるはずだし、そこを弱さだと短絡させて良いのか。そういう言葉遣いがミソジニーと接続するんだよ。

そして、リベラルに辟易して右傾した人々、つまり共闘できたはずの層がミソジニーに流れた件について、理解は示すが怒らない、これも残念。ここで本気で怒れていたら、景色はだいぶ変わったはず。

聞き手のダウサットさんが、あの手この手で「穏健派に響く言葉」を引き出そうとするのがしつこくて可愛い。「汝の敵を愛せよ」というキリストの言葉をどう思いますか?という問いに、コルベットは「(キリスト教の)愛は甘やかしということではない」と頓珍漢な回答をしています。

ダウサットの意図は、「政治的な敵を、MAGAは人間として扱うのか」だったはず。「厳しい政策は共同体を守る愛だ」は、敵を愛する話ではありません。MAGAは汝の敵を愛するのか、という問いに真っ向から答えようとすると、トランプ政治の核心、つまり「敵を人間扱いしない」「敵を悪魔化し憎む」が露呈するので、論点をずらすしかなかったのでしょう。

全体的に、まともな議論だと思いましたが、ミソジニストやら陰謀論者やら、身内の魑魅魍魎に対する甘さが残念。秩序ある政治を目指すなら、まずは魑魅魍魎たちをお祓いするべきなのでは。



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新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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