3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


崩されつつあるアメリカの中絶アクセス:いま必要な制度と対抗策

今日のピックアップNYT記事:Abortion Has Remained Mostly Accessible. That May Soon Change.

最高裁が3年前にRoe v. Wadeを覆し、憲法上の中絶の権利が否定された。これをきっかけに「中絶は減る」と予想されたが、実際には、中絶件数は全米でむしろ増えている。

理由は明確で、中絶を望む女性たちが別の手段を探し、特に中絶薬とテレヘルス(遠隔医療)が普及したためだ。いまアメリカの中絶の4件に1件はオンライン診療経由で行われ、医師が処方し、薬局が郵送し、女性が自宅で服用する。これは安全性も効果も高いことが多くの研究で確認されている。

しかし、この「新しいアクセス形態」が今後も続くとは限らない。共和党州は中絶薬の郵送を妨害、ルイジアナやテキサスでは、州外の医師が処方・郵送しただけで刑事責任や巨額の損害賠償を求める訴訟が相次いでいる。特にテキサスは「誰でも中絶薬を扱った他人を訴えられる」という新法まで作り、1件につき10万ドル以上の賠償を請求できるようにした。

トランプ政権自体も微妙な動きを見せている。人気低下を恐れて「全国レベルでの中絶禁止法には署名しない」と言いつつ、州が厳しく取り締まる余地は残したまま。

また、保健福祉長官ロバート・ケネディ・ジュニアは、中絶薬ミフェプリストンの「安全性再評価」をFDAに指示したが、見直し要請の根拠となる論文は、保守系シンクタンクによる「デタラメ科学」と研究者から批判されている。それでも22州の共和党司法長官は、この論文をもとにFDAに制限強化を迫った。

政権は、避妊医療やがん検診などを提供する医療団体「プランド・ペアレントフッド(PP)」が受けてきたMedicaid診療費補助を縮小し、クリニックが立ち行かなくなる状況に追い込んでいる。PPは避妊指導や乳がん検診など地域医療の要でもあり、特に農村部では、唯一の医療機関であるケースも珍しくない。

では何ができるのか?短期的には、ワシントン州のように、州がPPへの資金を補填すること。中長期的には、民主党寄りの州が既に導入している「テレヘルスシールド法(州外から中絶薬を送る医師を守る法律)」を広げること。ただし、これは将来最高裁で覆される可能性も高い。

根本解決は、連邦議会が全国共通の「最低限の中絶アクセス」を法律として定め、ほとんどの先進国が採用している「妊娠初期の中絶への広いアクセス」を保障することだ。また、いまだに紙の上では有効な「コムストック法」を廃止し、性教育や避妊への公的投資を拡大することも必要だ。(コムストック法 = 中絶関連の物品を郵送すると犯罪になるという19世紀の法律)

中絶薬の存在が、最悪の状況を食い止めてきたのは事実だ。しかし、薬が万能ではない。薬が使えない状況で治療を拒まれた結果、複数の女性がすでに命を落としている。

中絶アクセスは、単に女性の自由を守る権利ではない。命に関わる問題である。

俺的コメント

中絶を禁止したら、本当に中絶が減って、子供がバンバン産まれてアメリカの未来は安泰になると思っていたのか共和党? 

百歩譲って、19世紀に戻りたい気持ちはわからないでもない。しかし19世紀にも中絶は行われていて、貧しい女性は自己流の危険な中絶で命を落とし、良家のお嬢様は親のコネでこっそりと安全に中絶していた。

中絶をしなきゃしないで、無理やり結婚させられて人生詰むとか、子沢山すぎて飢えるとか、けしてお父さんたちにとってもいいことはなかったはず。「自分の娘は安全に中絶」ルートを持っている福音派金持ちのお父さんだって、「神様に顔向けできない自分」を隠し通さなきゃですから、救いがなく辛いでしょうよ?

つまり誰のためにもならない「中絶禁止」をなぜそんなに強制したがるのか?「誰でも中絶薬を扱った他人を訴えられる」テキサスに至っては、自分で自分の首を絞め過ぎ。昔のケベック州じゃないんだから、13人きょうだいとか生まれても養っていけないでしょう?それに若い女性の流出が始まっていると聞きましたよ、女がいなくなると犯罪増えて社会が荒みますよ…

政治学的にいうと「女性の自由を抑圧すれば、男の世界の秩序がキープできる」ということなのでしょう。実は女性の自由の抑圧はブーメランで男に返ってくるんだけど。テキサスの若人よ、君は人生を棒に振りたいのかね?



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新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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