3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


「アメリカは神権国家になるべき」ダグ・ウィルソンの理想

今日のピックアップNYT記事:He Believes America Should Be a Theocracy. He Says His Influence Is Growing

自らを「神律リバタリアン」と称する福音派神学者、ダグ・ウィルソンは、「政府がキリストの主権を公的に承認」すべきだと主張する。目的は「神を怒らせない法秩序」であり、プライド・パレード、中絶、同性愛行為などの刑事罰化を明言し、十戒を市民法に反映すべきだという。

リバタリアンは個人の自由に対する国家介入を嫌うはずだが、国家は神の法を執行するべきだと考えるウィルソン。キリスト教以外の宗教については、ユダヤ教・カトリックは歴史的に「取り込めた」として容認するが、イスラムには警戒を隠さない。ウィルソンが理想とするキリスト教国家では、イスラム教徒やヒンドゥー教徒も時間をかけて「同化」させる、つまり単なる「改宗」にとどまらず、文化的にキリスト教に適応させることを目標としている。

現代の福音派として、ウィルソンは部分的に「キリスト教のアップデート」を受け入れる柔軟性を備えながらも、男性優位の価値観に固執している。たとえば、女性への体罰を容認した過去のキリスト教的価値観については、「(今の時代は)女性への暴力は警察へ通報して当然」としながら、家族観は「男性首長制」を主張。選挙ならば世帯主の夫が最終決定者であるべきという。

聖書の「奴隷は主人に従うべし」という記述については、「奴隷制の復活は問題外」とする一方で、「中絶されるよりも奴隷の人生のほうがまし」と発言。「誰が何を犯罪化するか」の設計は自分が握る恣意性と懲罰的な思考を特徴としている。

ウィルソンは性的マイノリティやフェミニストを愚弄する過激な言葉遣いで知られ、これは「秩序の中心を語る権利が自分にある」という立場に由来する。言葉の暴力を通じて自らが「中心」と見なす神の法に帰依を促している。

父権の復活に集中して聖書の教えを制度化しようとする姿勢は、白人男性を迫害したリベラル政治への嫌悪に起因している。地位を脅かされた白人男性のフラストレーションを正義に変換する神学的フレームを提供し、聖職者というよりはインフルエンサーとして人気を集めている。

俺的コメント

みんな大好きNYT保守対談シリーズ!聞き手(ツッコミ役)のダウサット氏はリベラル寄り保守クリスチャンで、ダグ・ウィルソンと比較しても面白いのですが、とりあえずこんなじーさんがいますよ、というざっくり紹介ね。NYT読者のコメント欄、皆さんすでに怒る気もなく、珍獣を見せられた気分?もしかしたら、これはダウサットさんの「まともな保守ぶり」を見せつけるためにある対談だったりするのか?

ウィルソン尊師の活動拠点は「アイダホ州のモスクワ」だそうです。なんで「モスクワ」なのかは諸説あり。ロシア移民のホームタウンというわけでもなく、19世紀にヨーロッパの都市名をつけるのが流行った名残りみたい。アメリカのモスクワに宗教的支配構想を持ったウィルソン、目つきが怪僧ラスプーチン。ノリでロシアの地名をつけたらバチがあたって呪いが成就した感じ。

このじーさん、アメリカのイスラム教徒もヒンドゥー教徒もみんな改宗させてキリスト教国家にするんだって。1930年代どころか中世に逆戻りですよ。でもとりあえず最大の敵は異教徒よりも「男を去勢したアメリカのリベラル」。

この方の面白いところは、個人の自由をなによりも尊重するはずの「リバタリアン」を自称しながら、聖書の教えを法律化して、神(=俺様)に従わない人間たちの自由を奪おうとているところ。つまり太古の昔からの、神様を利用して己の支配欲を満たすというアレの再放送やね。

中世から一番アップデートされていない国が実はアメリカだった説。しかしこんな中世の亡霊みたいな爺さんが人気急上昇中なのは、父権の支配に抵抗したリベラル自体が「支配欲」という煩悩に犯され、「DEI声明を出さねば雇用しない」とか言い始めたせいじゃないでしょうか。それもまた支配の一つの形。本当に、人間はなぜ支配をやめられない?



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新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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