今日のピックアップNYT記事:American Women are Leaving Work Force. Why?
俺的記事まとめ
2024年以降、アメリカでは女性の労働参加率が急落している。男性に比べ女性の就業率は約2%低く、2024年1月から8月の間に21万2千人の女性が職を離れる一方、4万4千人の男性が新たに就業したという。賃金格差も拡大し、いかなる人種・教育階層においても女性が男性を上回る収入を得る例はないと報告されている。特に幼い子を持つ母親や黒人女性の就労率が大きく下がり、彼女たちが家計の担い手であるケースが多いだけに影響は深刻だ。
こうした状況にもかかわらず、現政権は女性労働者への支援を後退させている。労働省のポスターには「Make America Skilled Again(アメリカに技能を取り戻せ)」というスローガンと共に筋肉質の白人男性が描かれ、男性中心の労働観を露骨に打ち出している。さらに女性の地位向上を目的とした「女性局(Women’s Bureau)」の存在も、時代遅れだとして予算を2026年度で全廃する案を提示。国防総省では、女性の軍参加を促す諮問委員会や平和構築に女性を登用するプログラムが「分断を招く」と廃止され、「最高の男性基準」に兵士を従わせると長官が発言している。
女性の職域拡大を支援する助成金も一時停止され、ようやく抗議を受けて復活した。背景には「Project 2025」と呼ばれる保守的政策構想があり、性平等の指標を「女性・子ども・家族支援」へと再定義し、女性を家庭領域に押し戻そうとする意図が見える。
女性の就業減少の要因は一つには絞れない。保育費の高騰(2020~24年で29%上昇)、オフィス回帰命令による柔軟な勤務体制の喪失などが考えられる。若年層では、仕事が見つからないので進学して将来的なキャリアアップを図る傾向も指摘されている。
また、現政府による「多様性・包摂」への攻撃が女性を萎縮させていると見ることもできる。つまり、「女性や非白人が昇進しているのは実力ではなくトークン(象徴的登用)だ」というメッセージが社会に浸透しつつあるのだ。
メディアや政治家は依然として「男性の危機」に焦点を当て、女性の雇用喪失は深刻視されない。この空気は民間企業にも波及し、S&P500企業の多くが女性管理職比率や賃金格差のデータ公表をやめている。問題の可視化を止め、データを生まない体制を作ることで、「男は再び技能を持ち、女は家庭に収まる」という懐古的な幻想が再生産されつつある。
俺的コメント
懐古主義のおじさんたちは「女はわきまえて家庭に入るべし」という物語が大好き。そんなおじさんたちが集まったアメリカの現政権は、女性を家庭に戻すべく頑張っているという話。
日本で #わきまえない女 なんてタグが流行ったことがありましたが、日本人女性よりも強いイメージのアメリカ人女性が「わきまえろ」と言われて黙っているのか?噂によると、MAGA女性は「もうわきまえてますが、何か?」って感じで家庭の中では旦那を尻に敷いているそうです。つまり「家庭を守る女こそ強い女である」という伝説が再生産され「セルフわきまえメカニズム」がうまく回っているらしい。
ポピュリスト政治が大人気になった理由は、そもそも中流がどんどん貧乏になって、みんなが経済的不安を抱えるようになったから。そこをトランプがなんとかしてくれるっちゅーことで、経済をよくしてくれるなら、スキャンダルまみれだろうが許すって感じで票が集まったのよね?「女性を働かせないこと」でなんで経済が良くなるのか、だれか仕組みを教えてくださいよ?
冷静に考えれば、格差を是正するには富の再分配が絶対に必要。でも共和党系の経済エリートは、それだけは絶対にやりたくない。再分配の代わりに、アメリカ人の誇りという物語をばら撒くのです。「庶民:昔みたいに安定した生活がしたい」「保守エリート:わかった、じゃあ昔の家族形態を返してあげる」。金は渡さないが誇りは返しますよ、というやり方でどこまで庶民を騙せるか?アメリカの実験は今後も目が離せません。
