今日のピックアップNYT記事:The Unrepentant Return of Christian Diet Culture
俺的記事まとめ
保守系団体 Turning Point USA が、20代~30代女性向けのイベントを開催、この中でインフルエンサーのアレックス・クラークは、「プロザックよりプロテインを」と語り、「筋トレとクリーンな食生活を実践し、ホルモンを整え、人生をきちんと管理している女性こそ、保守の主流(mainstream)」であると主張した。
ダイエットに民主党も共和党もないはずだが、クラークの発言は「スリムであること」と「クリスチャン」を結びつける動きの再来を象徴している。
かつて、痩せている女性はむしろ「不健全な存在」と見なされていた。たとえば2000年代、「痩せてる女の代表」ケイト・モスは、ロックスターの彼氏と煙草を吸いながら短パン姿でフェスに登場するスタイルで、清く正しいクリスチャンの顰蹙を買った。痩せていることはドラッグと夜遊びの象徴であり、どちらかといえば反社会的で自由奔放(=リベラル)なイメージだった。
しかし、アメリカの福音派文化においては、「太っていない = クリスチャンとして正しい」という考えは昔から存在していた。1970年代の福音派私学オーラル・ロバーツ大学では、肥満と判定された学生は減量プログラムに強制参加させられ、減量に失敗すると停学処分もあり得た。2016年には、同大学の新入生900人がフィットネストラッカーを装着させられ、毎週150分の激しい運動を義務づけられていた。
また、2013年には牧師のリック・ウォレンが医師と共著で『The Daniel Plan』という健康本を出版。「サタンは不健康を望み、健康な体は神を称える」「神はあなたに与えられた身体をどう使ったかで裁く」といった文言が並ぶ。ここではダイエットや運動は、信仰の延長として説かれている。
2010年代には「ボディ・ポジティブ」運動が注目された。「痩せていない体も美しい」とする思想が流行し、痩せていることを語ることすらタブー視されるようになった。しかしこの動きは長く続かず、「健康」や「自己改善」という名のもとに、痩せることの圧力は別の形で戻ってきた。
そして今、痩せ薬「オゼンピック」(Ozempic)の登場により、再び「スリム=成功」「スリム=正しい生き方」というストーリーが復活している。オゼンピックという薬は、体型が「意志の問題」ではないことを教えてくれたはずだが、一部のキリスト教系ウェルネス界隈からは、「痩せ薬に頼るのは自制心の欠如であり、聖霊の果実(self-control)に反する」といった批判も出ている(つまり、意志の力で痩せてこそ尊い、という発想)。
右派・左派、宗教・世俗を問わず、「女性はしっかり自分の体を管理して痩せろ」という圧力がなくならない現状にはうんざりする。とりわけソーシャルメディア時代は、見た目が整っていないと、発言そのものが世に届かない。「スリムでなければ価値がない」とする思想が、アルゴリズムのレベルで内面化されている中で、どうやってこの構造を打ち破ればいいのか、答えが見えてこない。
俺的コメント
ダイエットの話題まで民主党と共和党に分かれるんかい!アメリカの政治的分断、全方位型すぎて、もう笑うしかない。
「プロザックよりプロテインを」を解説しましょう。これは、保守の敵=リベラル女性(民主党支持)に対する皮肉です。プロザックは抗うつ剤であり、現代女性の精神的不安定さを象徴しています。「リベ女はSNSでパニック障害を語ったり、自閉症やら鬱の診断を共有したり、情緒不安定」「でも私たちはスピリチュアル的にもホルモン的にも整ってるんです。だからメンタル崩壊もしませんし、薬もいりません。ちゃんと筋トレして、プロテイン飲んで、祈ってるから」というマウント、それが「プロザックよりプロテイン」の意味するところであります。
しかし「スリムな筋トレ女子こそ保守のメインストリーム」という主張、こじ付け感がハンパないです。筋トレスリムな保守女性が本当に「メインストリーム」ならば、トランプ支持の集会に女性はほぼいないはず、というコメントがついていて思わず笑ってしまったよ。共和党支持女性の「メインストリーム」は、むしろジャンクフードを主なカロリー源とし、でぶぽっちゃりで星条旗柄のレギンスを履いている方々、というステレオタイプがあるのは事実。
ナチュラル志向の保守女性は、MAHA (Make America Healthy Again) 界隈の方々で、ぽっちゃり星条旗レギンスMAGA女性とは、かなり外観も生態も異なるはず。ナチュラルスピ系とぽっちゃり星条旗という、極端な層を両方とも「保守」で取り込めるとはいったいどういうこと??
それはつまり、アメリカのリベラルが今いかにイケていないか、ということなのだと思います。なぜリベラルは共感されないのか。それは「WOKEがもたらす上から目線」につきるかもしれません。自称目覚めている皆さん、どうですか?身に覚えはありませんか。
筆者によると、「女性はしっかり自分の体を管理して痩せろ」と常に何者かに命令されているそうですが、これはいったい誰が言っているんでしょうね?WOKE的にいうと、キリスト教だったり世俗の社会規範だったり男目線だったり色々あるのでしょうけど、女性の「痩せたい」願望を「外からの抑圧」で片付けるの、個人的にはもうお腹イッパイであります。私は、私が痩せたいと思うから、痩せたいのである。我思う、故に我あり、それでいいじゃん。
