3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


暴政の時代へと回帰するアメリカ

今日のピックアップNYT記事:America, This Is an Old and Brutal Tyranny

トランプ政権は、法的手続きなしに外国人を国外に強制送還し、戻す責任もないと主張している。米国に長年住み、2019年に保護資格を得ていたサルバドール人キルマー・アブレゴ・ガルシア氏が、犯罪組織MS-13のメンバーだと疑われ、裁判も経ずにエルサルバドルの刑務所に送還された。連邦裁判所と最高裁は即座に帰国命令を出したが、政権はこれを無視し続けている。

国務長官は「米国の外交政策を裁判所が決定する権利はない」と述べ、大統領の絶対的権限を示唆。トランプ氏も、米国生まれの犯罪者をエルサルバドルに送る可能性に言及、強制追放政策を正当化している。

こうした動きは、合衆国の法治原則を根底から覆す専制的行為であり、歴史的にアメリカ人が闘ってきた「恣意的な支配」に逆戻りするものだ。アメリカ独立宣言でも「我々を海の彼方へ送り、でっちあげの罪を裁かせたこと」が暴君の罪として非難されていた。

「恣意的な支配」は、実はアメリカ史においてまったく新しいものではない。19世紀、黒人が法的に自由であっても、奴隷として拉致・売却される危険が常にあった。奴隷市場の高騰が誘因となり、白人の法的保護を欠いた自由黒人は、制度と人種差別のせいで極度に脆弱な状況にあった。

黒人の法的地位は多くの州で制限され、契約や証言すら認められず、基本的人権を守る手段を持たなかった。これは奴隷制度が「黒い肌=隷属可能」という社会的通念を生み出したからだ。

この歴史が示すのは、ある集団の自由が否定された社会では、他の人々の自由も脅かされるということだ。自由黒人が拉致の危機にさらされていたように、白人も奴隷制による社会的制約を受けていた。自由を「特定の人々だけのもの」にすることは不可能であり、不自由は社会全体に広がる。

今日、アメリカでは半数がトランプ氏の移民政策を支持しているが、多くの移民は「犯罪を犯していないという事実」は無視されがちだ(不法入国は民事違反であり、犯罪ではない)。このような「共感の欠如」が、民主主義の根幹を静かに蝕む。

誰かの自由を奪うことは、他人の自由をも危うくする。専制は常に「周縁」から始まり、やがて中心を飲み込む。今がその入口かもしれない。

俺的コメント

黒人の自由が制限されることで、白人も社会的制約を受けた、とはどういうことか?例えば、「白人が奴隷制度を批判するとリンチに合う」→ 白人の言論の自由が制限される。また、奴隷労働が安すぎたせいで、白人の貧困層は「奴隷よりちょっとマシ」程度の低賃金・劣悪な環境で働かされる。つまり、「誰かの自由が制度的に奪われている社会では、他の人の自由も確実に縮小される」というお話です。

カナダ在住者にとって、この話はたいへんわかりみが深いです。隣国で第二次トランプ政権の移民摘発が始まったばかりのころ、ご近所さんがうちにきて、「日本に帰省するとき、絶対アメリカ経由で行っちゃだめだよ!白人以外はみんなエルサルバドル行きの飛行機に乗せられちゃうんだから!!」と言われました。そんなバカな…これは新しい陰謀論?と思ったのですが、今やカナダ政府はアメリカに行かないように国民に勧告、アメリカ行くんならBurner phone (使い捨てケータイ)を持っていけと推奨しています(スマホにアンチトランプのコンテンツがあると別室送りになるらしい)。

これは隣国の「移民の自由を奪う制度」が、隣国カナダ市民の自由を侵害しているという構図です。個人的には「アメリカに行く自由」が制限されても全然困ってませんが、アメリカと商売上の付き合いがあるカナダ人、アメリカに親戚がいるカナダ人などには、大変迷惑な話です。

記事内、「我々を海の彼方へ送って裁くこと」とは、アメリカ植民地時代に、現地の法ではなく遠い本国の恣意的な裁判にかけられたということ。つまりトランプは、かつての暴君ジョージ3世とまったく同じことをしているわけです。アメリカの右翼が大好きな「建国の父」たちは、「トランプのようなことをする王様」に反抗して国を作ったのですよ、とトランプ支持者に諭しても、「ジョージ3世とか知らねーし!」となりそうよね…



About Me

新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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