3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


ジョナサン・ハイトと考えるスマホ時代の子供たち

今日のピックアップNYT記事:Our Kids Are the Least Flourishing Generation We Know Of

人間の子供時代は、「文化的な脳」を完成させるためにあるといっていい。木に登ったり、ボール遊びのルールで揉めたり、遊びを通じて子供は脳を鍛え、社会性を備えた大人へと成長していく。

昨今の忙しい親は、子供と密に過ごす時間を確保しているかどうかで「親としての自分」を評価するきらいがある。しかし子供にとって本当に大切なのは、親の目の届かないところで、子供同士で遊び、ぶつかり、工夫する時間である。親は愛情と信頼と安全な環境を提供した上で、子供の世界に干渉しないほうが、むしろ望ましい。

現在、40%のアメリカの2歳児が、自分専用のタブレットを持っているという。親たちがデバイスに子守りをさせるとき、子供たちは「スワイプとタップ」を繰り返し、可塑性の黄金期にある脳は、スクリーンの中でアルゴリズムに最適化された刺激を求めるようになる。その刺激は、社会に共通する善悪や物語を欠いた断片的なものであり、子供が子供同士の遊びの中で学ぶ道徳の文法がない。

AIコンパニオンが「思い通りになる理想の友達」として子どもの心を満たし始める時代、そこには摩擦というものがない。リアルな世界では、思い通りにいかない経験(摩擦)を通じて社会が共有する枠組み、つまり道徳が習得されていくが、自分しかいないスクリーンの世界に道徳は成立しない。SNSで注目されず寂しい思いをしている子供には、今やAIが自動的にフォロワーを生成するアプリさえあるという。AIが人間関係を「カスタマイズ可能な快適ゾーン」に変えてしまうとき、リアルな他者と向き合う訓練は不可能になる。

スマホとSNSが爆発的に普及した2012年以降、子どもの自己肯定感と幸福感は急降下した。子どもがネットを使っているとき、その一瞬一瞬が広告会社の間で競りにかけられている。リンクをクリックした途端に、裏で何千もの企業がオークションに参加して、一瞬だけ子供の脳をハイジャックする権利が争われる。子どもたちは15秒単位の断片的な快楽を追うリズムを脳に叩き込み、本を読んだり映画を見る集中力は失われていく。

子供を守り、人間性の喪失を防ぐには、まずは大人と子供をはっきりと区別し、子供の脳が社会性を学べるようにデジタル消費の制限を設けるべきだろう。子供のメンタルヘルスの悪化とSNSやスマホの因果関係は、パンデミックを境に誰もが確信するようになり、社会的な対応が急がれている。オーストラリアでは16歳未満のSNS利用に年齢認証を義務化する法案が進行中であり、成功すればグローバルに波及する可能性が高い。高校生以下にはスマホを持たせないという新しい規範を、親世代が推進していくべきだろう。

俺的コメント

エズラ・クラインとジョナサン・ハイトの対談のまとめです。

俺らが子供の頃は「テレビばっかり見ているとバカになる」とか「漫画ばっかり読んでいるとバカになる」と言われていましたが、テレビも漫画も、「子供の脳が秒単位で広告会社に切り売りされるSNSの世界」に比べたら、全然マシ….いや、子供にテレビ見せて漫画読ませましょうよ?って言いたくなりました。

SNSのコンテンツは「自由に選べる」とか「あなた向けにカスタマイズ」されているとかいいますけど、実際はアルゴリズムに選ばされているだけ。個人化されたコンテンツの提供がいかに大事かというマーケティング系の主張を読むと、おまえら絶滅しろって思いますよね。

この記事を読んで、「キュレートされたコンテンツ」の大切さのようなものを感じました。先生でも、親でも、誰かが子供を思って選んだコンテンツ、例えば図書館や書店のキッズコーナーの本棚には愛がある。親が選んできた本を子供が気に入ってくれて、同じ本の読み聞かせを百万回せがまれるアレは、子供の神経系に親の世界観が再生産される愛しきプロセスであります。あと、突然昭和の思い出を語りますが「東映まんがまつり」というキュレーテッド・コンテンツにも愛があった….。

ジョナサン・ハイトの「機械に子守りをさせるな、子供が子供と外で遊ぶ時間を取り戻せ」には激しく同意です。でもちょっとだけ実験的思考をしてみると、「15秒単位の断片的な刺激」を大量に食べて育った脳も、新しい才能を産むのでしょうか?たとえば1.5秒で共感を呼ぶ表現力とか?あらゆる世代は「いまどきの若いもん」を批判し、どの世代の若いもんも新しい特技を身につけてきたので、もしかしたら、そんな新しい価値もあるのかもしれません。怖いけど。



About Me

新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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