3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


「反オルガリヒ」戦略の落とし穴

今日のピックアップNYT記事:It’s About Ideology, Not Oligarchy

民主党は、ドナルド・トランプに対抗する物語として、「反オルガリヒ」という言葉を使うようになった。これはバーニー・サンダースが彼の宿敵である「超富裕層」を指す言葉でもあり、トランプの私利追求、億万長者イーロン・マスクの影響力、そしてこれまで共和党を「超富裕層の党」と批判してきた構図を一言で表せる便利な言葉ではある。

しかし、「オルガリヒ(寡頭制)」という言葉は、トランプ政権の本質をついているとはいえない。むしろ、反トランプ勢力の目を曇らせることになるだろう。

これまでにトランプが実行に移した最も破壊的な政策を見ると、アメリカのオルガリヒ化を狙っているようには見えない。例えばDEIへの攻撃。多様性やウォーキズムは、オルガリヒにとって重要なことなのか?企業はこれまで、ビジネスを行う上でのコストとして進歩主義の縛りを受け入れ、むしろDEIを管理戦略や商業戦略として積極的に推奨してきた。資本家は世の中の流れに敏感であり、反DEI感情が消え去れば、再び適応するだろう。

次にイーロン・マスクによる「政府効率化省(Department of Government Efficiency:DOGE)」について考えてみよう。オルガリヒとは、役所の効率を気にするような存在なのか?確かに、公的機関の縮小によって空いたスペースに入りこみたい企業は存在するだろう。しかし、アメリカの民間企業セクター全体としては、官公庁と親密に関わっており、大口の発注をくれる役所は、大きいほど恩恵が得られるはずだ。

オルガリヒの権化とも言えるマスク本人についても見てみよう。彼の大胆不敵な改革は、マスク自身の掌中の珠であるテスラの足元を揺るがした。共和党が権力を失う時が来れば、マスクの立場がさらに危うくなるリスクは大きい。マスクは自らの富を増やすために権力を利用しているのではなく、信念に資産を投じているのだ。

そしてトランプにとって最もリスクの高い政策である「大規模な関税実験」。これは、オルガリヒ的な自己利益ではなく、明らかにポピュリスト的な考えが動機になっている。アメリカ経済を動かしている「支配者層」の誰も、こんな政策は望んでいないのだ。

この政策を望んでいるのは、右派の中にいる「ネオリベ経済の批判者」たちだ。つまり、グローバル化したシステムによって投資家や大企業、億万長者が利益を得る一方で、その恩恵を受けられずにいる低所得層の代弁者を自任する、体制内の異端派たちである。

トランプに献金する支援者たちもウォール街も、関税実験に反対している。つまり、この政策は、サンダースや左派民主党が好んで使う「金持ちは敵だ」の論法では批判できない。これはネオリベ資本主義の強化ではなく、その前提の否定なのだ。

経済が停滞し、マスク流の削減策が人気のある公的サービスを脅かせば、民主党にとって一番確実な政権復帰への道は「現状への復帰」を約束することだろう。つまり、「オルガリヒに対する革命」にはならないということだ。

俺的コメント

バーニーの敵とトランプの敵は実は同じなのだ、という説です。当然のようにコメント欄でどちゃくそ叩かれていますが、貴重な視点ではありましょう。世の中が「たいへん悪い状況」にあるからこそトランプのような人が出てきたわけで、反トランプ=「たいへん悪い状況にまた戻る」では困りますよね。

トランプは単に皇帝になりたいだけの人って印象ですが、イーロン・マスクは私利私欲のために動いているのではない、という見方はなんか頷けるかも。ツイッターの買収も「儲かるから」じゃなくて、彼なりに「言論の自由」を守りたかったからなんですよね?現在、テスラを犠牲にしてまでマスクが目指しているものは何なのでしょう。

「いま富とか名誉ならばいらないけれど翼が欲しい」っていう歌を中学の合唱コンクールで歌わされた覚えがあるんですけど、富も名声も要らないから!!ってトランプ爺さんに翼(じゃなくてチェーンソー?)をもらったイーロンおじさん、どこまで飛んでいきなさるのか。イカロスのように墜落するにしても目指している高みがバーニーと同じならば、左翼は別の飛び方でそこに到達するやり方を研究しなさいよ、という話。



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新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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