3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


トランプ政権の経済デトックス計画とは

今日のピックアップNYT記事:Is Trump ‘Detoxing’ the Economy or Poisoning It?

ドナルド・トランプの経済政策チームは何をしようとしているのでしょう?景気後退のリスクを冒してでも到達すべき「約束の地」を実現する壮大な理論とは何なのでしょうか?

世界経済をリセットして、アメリカの優位性と繁栄を保とうとする目論見です。いわゆる新自由主義的な考え方から、重商主義的な考え方、1930年代型の覇権国家的な考え方へと移行しようとしています。

トランプのやっていることに理論的な裏付けなどない、という意見もありますが。

世界経済のリセットというアイデアは、トランプ以前から机上の議論としては存在していたのです。第二次世界大戦後の「ブレトンウッズ協定」に匹敵する改革が可能か?というような議論ですが、経済学者の多くは無謀な考えだと思っています。強硬な覇権戦略を進め、経済や世界の金融システムが崩壊してしまったらどうするのか、トランプ政権は触れていません。

トランプは本当に経済を理解しているのでしょうか?

トランプを理解するには、彼が単にお金だけでなく、政治的、文化的、社会的な資本も支配しようとしていると考えることです。これまでアメリカの偉大さは、民主主義などの道徳的価値観に支えられてきました。トランプが打ち出しているビジョンは、そうした「偉大さ」の定義とはまったく異なるものです。

アメリカの偉大さは、「世界のリーダーでありながら、各国を屈服させる力を行使しない」点にあったと思います。力で屈服させてしまえば、短期的に有利な取引はできても、長期的にはみなアメリカから離れてしまうのでは。

トランプ政権は「飴と鞭」ではなく鞭だけを使いたいようですが、これには限界があります。関税により貿易を有利にすすめようとしても、世界はアメリカを抜きにして貿易を続けていきます。アメリカは中国の半導体事業を潰そうとしましたが、逆に中国がアメリカに頼らず生きる道を急がせる結果になりました。カナダはトランプの脅しに対して団結し、瀕死の状態だったリベラル政党が復活しました。アメリカは力を誇示すればするほど力を失う結果になるかもしれません。

トランプ政権は財政赤字をどのように捉えていますか

アメリカの債務は膨張し、利払いは国防予算を超える規模になっています。トランプ陣営は、債務がアメリカの大きな弱点だと認識しています。財政赤字を削減し、その結果として債務を減らすのは、理論上は単純な話ですが、彼らが現実的な計画を立てているようには見えません。むしろ、4兆ドルを超える減税計画を進め、国防費を増やそうとしています。いずれ経済が成長すれば、結果的に債務は自然と減少するという考えがあるようですが、それは苦し紛れもいいところです。

トランプ政権が考えているアイデアの一つに、諸外国が保有している米国債やドル、金を永久債や長期債といった金融商品に交換させるというものがあります。つまり、「もっと長期の米国債を買い、保有資産を長期債に乗り換えないなら、関税をかけるぞ」「我々の防衛の傘下には入れないぞ」と迫るのです。日本の視点からすれば、これは非常に不利な取引です。現在保有しているものが、より条件の悪いものに置き換えられるからです。

富裕層やテック企業がトランプの寵愛を得るための行動に出ています。彼らがトランプに阿ることで得るものと失うものは?

寵愛ベースの関係は脆く、長期的な計画を立てることが難しくなります。また、腐敗を広め不適切な行為を促進することになるでしょう。阿ることで「得るもの」をシニカルに表現すれば、「王の名を讃え貢物を欠かさなければ好き勝手させてもらえる、それなら安いものだ」となるでしょう。つまり中央アジアの部族社会のような感じになるかと思います。

経済の「デトックス」という表現には、好転反応を耐えた後に健康になれる印象がありますが。

トランプ政権の世界観を文化人類学者として理解すれば、債券依存、安価な輸入品依存、金に金を産ませる経済への依存から脱却しようというビジョンが伺えます。

彼らが目指すのは、より産業中心で、自給自足型で、労働者階級にとって良い仕事が生まれるような経済です。そうすることで、アメリカはより強く、支配的な立場を確立し、サプライチェーンの一部を握る中国のような潜在的な敵国による混乱のリスクが減ると信じているのです。

文化人類学者ではなく経済ジャーナリストとしての視点で言えば、この理想が大きな混乱や障害なしに実現できるとは到底思えません。何よりも、冷酷な権力政治、弱者や敵を踏みつけにするようなビジョンには、非常に不快感を覚えます。

俺的コメント

エズラ・クライン・ショウに文化人類学出身の経済ジャーナリストさんが招かれていました。ながーい対談ですが、俺的に興味深かった部分のみ、まとめました。

天文学的な額の財政赤字があるけど、減税も軍拡もする。その矛盾は諸外国を脅して不利な取引をさせて解決する。ものすごいジャイアン理論!みんなトランプ王の前に平伏する前提、奇跡のような一発逆転パスが通る前提。「吾輩の辞書に不可能という文字はない」っていうアレですかね、ただのおめでたい人みたいではありますが。

そういえば、ナポレオンもトランプも、エリート政治やグローバル化に対する不安が高まったあたりで登場、請われて人民の皇帝になりました、ってとこが似てるわね。

ジャイアン理論なんか理論と呼べるか、という趣旨のコメントが複数ついています。関税カード出したり引っ込めたり、トランプの支離滅裂なやり方の裏に、さも「まともな経済理論」がありそうに語ることを theory washing とか sane washing というそうです。初めて聞きました。

文化人類学者の冷静な視点を「なんとかウォッシュ」だと侮辱しないでほしいわ。文化人類学者として分析した、という部分をご覧ください、「債券依存、安価な輸入品依存、金に金を産ませる経済への依存から脱却」「労働者階級にとって良い仕事が生まれるような経済」これこそ民主党が目指すべきじゃないの?悪口ばっかり言ってると大事なものが見えてこないねっけ。



About Me

新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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