今日のピックアップNYT記事:Zuckerberg’s Macho Posturing Looks a Lot Like Cowardice
俺的記事まとめ
メタ社長のマーク・ザッカーバーグが、ジョー・ローガンの格闘技ポッドキャストにゲスト出演した。
柔術を習っているというザッカーバーグ。ローガンと格闘技の話で盛り上る中で、テクノロジー企業の経営と「男性性」についても話が弾んでいた。ザッカーバーグによると、最近の社会は「去勢された感」があるという。いわゆる男らしさは敬遠され、経営者が攻撃的な態度を見せたりしたら顰蹙されるが、格闘技では相手を打ち負かす「容赦なさ」が求められる。男性としてのパワーを発揮できる柔術の中に、ザッカーバーグは自己表現の場を見出しているという。
格闘技トーク以外にも、最近のメタの動向、特にファクトチェックや投稿監視など、「言論の自由」についてのやりとりがあった。パンデミック時に、バイデン政権がFacebook社員に対して言論統制を行ったという話は興味深く、事実ならば言論の自由を希求する人間として憤りを感じる。言論の自由という原則に立ち戻るべく、今後メタは投稿内容の管理をしないという。
しかし、最近のザッカーバーグの行動は、彼が語る「言論の自由」や「男らしさ」と一致していない。全体主義の国に育った人間として、有力者の言葉よりも行動をよく見ておくべき、と警告しよう。
例えばメタでは、これまでトランスジェンダー社員用に男性トイレにも常備してあったタンポンを、今後は置かないことにしたそうだ。格闘技が大好きな強い男は、タンポンが視界に入ってくることに耐えられないらしい。メタはまた、トランスジェンダーのテーマカラーをFacebookメッセンジャーアプリの壁紙として使えないようにした。たいした「言論の自由」ではないか。
ザッカーバーグのこうした行動は、トランスジェンダーが大嫌いなトランプへの忖度だろう。民主党の時代に比べると、かなりの変節だ。かつてザッカーバーグは、Facebookがフェイクニュースの拡散に寄与してしまったと謝罪し、2021年の議事堂襲撃事件の直後には、トランプをFacebook出禁にしている。トランプ&マスクの時代が到来するや「フェイク、中傷なんでもあり」派に与することに決めたようだ。
ファクトチェックや投稿監視は、Facebookのような巨大なプラットフォームでは、確かに大変な作業には違いない。しかし「大変だから」「間違いも起こるから」がやらない理由になるのか?スクロール中毒を起こすフェイクニュースや中傷コンテンツを野放しにすれば、メタはそれだけ儲かるという事実についても、ザッカーバーグはあえて何もコメントしていない。
トランプがザッカーバーグを投獄すると脅した件についてはどうなのか?プラットフォームのオーナーに対する脅しこそ、言論の自由に対する攻撃ではないのか?ポッドキャストの中で何か言ってくれるだろうと楽しみにしていたが、その件についてはザッカーバーグもローガンも沈黙し、ひたすらトランプを讃えるのみ。
「アメリカが勝つ」方向に国を導くであろうトランプは、メタというアメリカ籍企業に対する攻撃(欧州の反トラスト訴訟など)から自分たちを守ってくれるだろう、と期待するザッカーバーグ。格闘技を習い、強い男になりたい経営者が、権力者に媚びて風見鶏を決め込むとどんな恩恵があるのか。お手並み拝見といこう。
俺的コメント
「ザッカーバーグは時の権力におもねる変節漢である」と一言でまとめてしまうのは簡単なんですけど、そんな単純な話でもないな~と件のポッドキャスト(2時間以上!)聞いて感じました。こんなに長時間に渡ってザッカーバーグの声を聞いたのは初めてですが、なんかもう普通に良い人オーラ。言葉の端々に女性へのリスペクトも感じますし。
「プラットフォームがデカすぎて、もうファクトチェックと投稿管理は無理」となった経緯は非常に興味深く、北米テクノロジー業界の隅っこで生きてきた身としては、共感できる部分がすごく多かった。トランプを喜ばせるためにファクトチェックをやめたという印象を受ける人は多いと思いますが、技術的な問題も大きいのだと思う。「時代に合わせる」ことで成長していく業界ですし、ポリシー七変化はそれだけ柔軟で改革力があるということ、という解釈もできます。タンポン隠すとか小せぇことすんなよ、とは思いますが。
しかし余りにも巨大になったプラットフォーム企業。アメリカという国を超越する存在になった、という意識はないんですかね?ユーザー数が地球人口の半数に匹敵するというのに、「アメリカの国益として俺らを守れ」以外のは発想は出てこないのか?地球人として自分が抱えるに至ったものの大きさに悩んだりしないんか?
もし俺がメタの社長だったら、「人類に数学をやらせてはならない」と世捨て人になってしまった数学者グロテンタークのように、「人類にSNSを、AIを持たせてはならないのでは」と悩む気がする。自社の繁栄にしか興味がなさそうなところが、なんかすごく怖いんですけど。
救いがあるとすれば、驕れるものは必ず滅びるのでトランプもいつかは滅び、プラットフォームは権力の交代に合わせてまた変わるだろうということ。その時まで人類が生きていればの話だけど。
