今日のピックアップNYT記事:Maybe Now Democrats Will Address Working-Class Pain
俺的記事まとめ
大統領選挙が終わった。「なぜアメリカは共和党を選んだのか」と問われ、私は故郷の人々を思う。農業と中小の製造業が主な産業であるオレゴン州の故郷では、ほとんどの人がドナルド・トランプを支持者している。ガソリン代が払えない、2ドルのパーツが買えなくて車の修理ができない、家族が薬物に溺れている、と嘆く彼らは、民主党政治に幻滅している。
現在のブルーカラー労働者は、インフレ率を考慮すると、1972年よりも収入が低くなっているという。人々が既存の体制に怒りを感じるのは当然だ。今回の選挙でいえば、現職大統領と自分は違う、というスタンスを取らなかったカマラ・ハリス副大統領は、既存体制の象徴といっていいだろう。
バーニー・サンダースは、労働者階級を見捨てた民主党が労働者階級に見捨てられるのは当然であると述べたが、労働組合を支持し、最低賃金を上げ、製造業の雇用増大を目指し、子供の貧困を減らしたのは民主党政権だ。トランプはかつて飲食店従業員のチップ収入を非課税にすると公約したが、2017年には雇用主が従業員のチップを没収できるような規則を提案している。
しかし、民主党こそ労働者階級の味方なのに、と叫ぶだけでは何も始まらない。民主党支持者は貧しい人々の心の拠り所である信仰を否定し、上から目線で余計なご指導をしてくる大卒エリートの集団、というイメージが定着してしまっている。たとえば多様性尊重の名の下に不自然な言葉遣いを強要し、学がない人間の疎外感をかきたてる。「ホームレス」という言葉が差別的だと別の言い方を考えていただいたところで、当のホームレスにとってはどうでもいいことだ。
「リベラル=上から目線」ではないと考える人は、私が8月に書いた記事を見てほしい。トランプ支持者を軽蔑すべきではないという意見に対し、「しかし彼らは軽蔑に値する」と反応したリベラル読者のなんと多かったことか。
民主党は富の再分配を進めようとするが、人々が再分配を望んでいるのは「機会の平等」と「尊重される平等」である。
トランプはラティーノ人口の半数から票を獲得し、黒人、アジア人、若い男性、そして女性の間でも支持者を増やしている。ハリスが大卒人口から獲得した票の割合は、トランプが非大卒人口から獲得した票の割合とほぼ同じである。しかし、後者のほうが絶対数がはるかに多い。
民主党はまず、プライドを捨て、自分たちではなく天敵たるトランプを選んだ労働者階級にリスペクトを示すことから始めねばならないだろう。
俺的コメント
トランプ人事の話ばかりでニュースがつまらない昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか。アメリカ大統領選挙明けの日々は新潟で過ごしておりました。カナダの地元ではSNSのプロフを真っ黒にしちゃったり気落ちしている友人が多いです。紹介した記事は数ある民主党反省文の一つですが、コメント欄には、なんで大卒だと叩かれないかんのだ!という怒りが渦巻いています。
トランプ支持者は絶対に反省なんかしない、なぜリベラル大卒だけが反省を強いられ、MAGAは反省しなくても良いのか?と嘆く友よ、反省とは高度に知的な行為であります。そして、高度に知的な能力を持っているリベラルなあなたは、おそらく特権階級に属します。
特権階級は、革命に味方したところで民衆に憎まれるもの。リベラル、大卒というだけで特権階級扱いされたらたまらん、と思うでしょうか。それではぜひ Poverty, by Americaという本を読んでみてください。
民主党が勝っていたら、民主主義を否定する勢力が蜂起し、アメリカは内戦状態になったでありましょう。選挙に負けたら勝った側を祝福しスムーズな政権交代を約束するというアメリカの伝統は、民主党が負けたからこそ守られたのです。
「トランプが勝ち、民主主義は守られた」。リベラルが内側からひっくり返される感覚を、マインドフルに観察しようではありませんか。
