今日のピックアップNYT記事:This Is What Elite Failure Looks Like
俺的記事まとめ
2016年、ヒラリー・クリントンはトランプを支持する国民の半数を「嘆かわしい人々」と呼んだ。2008年にはオバマの「宗教と銃にしがみつく人々」発言、2012年にはロムニーの「税金を払わない47%」発言があった。民主党・共和党に関わらず、国のトップによる庶民への上から目線が目立つようになった2010年前後は、国の荒廃を象徴するオピオイド危機が深刻化した時期でもある。
民主主義国では、大衆の声に耳を傾けない指導者は選挙で排除できる。既存の権力構造の外から来たトランプの勝利は、産官学マスコミを含むすべての米国エスタブリッシュメントに、反省をもたらすべきだった。
しかし民主党は、反省どころか「判断力に欠けトランプの嘘に踊らされる国民が悪い」という思考に陥り、共和党はといえば、トランプ政権下でもウォール・ストリートのエリート優遇は変わらず、社会保障に消極的な態度を取り、グローバル経済優先の現状維持に留まった。
現在のアメリカの若い世代は、インフレ率を考慮すると50年前よりも所得が低く、独立せず親と同居する傾向にある。親の代より豊かな暮らしをするというアメリカンドリームは過去のものとなり、大半のアメリカ人にとっては、「家族を養えるだけの経済的安定」が最大の関心事となっている。
気候変動対策よりも生活、低賃金の仕事を奪う移民の流入を制限せよ、といった庶民の希望を優先させることは、ポピュリスト政策として批判される。国のトップが世論に働きかけ、国民を指導することは確かに必要だ。しかし、民主主義国においては、国の上層部の意向が人民の意向に優先してはならない。
トランプはポピュリスト経済アプローチの適任者とはいえない。トランプは地震を起こし地割れを広げるだけで、地震後にあるべき復興のビジョンがない。しかしトランプの後に続く若い世代の共和党員たちは、国内経済を立て直し、アメリカ庶民の暮らしを良くするための具体的な提案を行なっている。
アダム・スミスの言う「神の見えざる手」が正しく機能するには、外国の産業よりも国内産業をサポートし、自国民が潤う仕組みを作らなければならない。生産拠点を外国に移したり、低賃金を厭わない移民を使えば利益が増すとなれば、資本家は誰もがそうするようになる。こうした動きは政策で抑制することができる。
労働者をサポートするコミュニティも大切だ。特に労働組合は重要な役割を担う。残念なことにアメリカでは、労働運動イコール左翼の政治運動というイメージが定着しているが、労働者の大部分は、政治とは無関係の、職場の問題にだけフォーカスした労働組合を望んでいる。
エリートとポピュリストとの正面衝突は、けして不可避なことではない。問題は、エリートに自分たちの価値観が絶対ではないと認める度量があるかどうかだ。
俺的コメント
「宗教と銃にしがみつく人々 = 無知蒙昧な野蛮人」「税金を払わない47% = 公的援助に頼る怠け者」という解釈でよろしいかな。二大政党のトップが揃って庶民をコケにする発言をした2010年前後からオピオイド危機が悪化、アメリカの薬物死件数は今、ソ連解体前後のロシアのアル中死と同じくらいの規模だそうです。
アメリカのエスタブリッシュメントは、民主党も共和党も、「成功して裕福になった人たち(=エリート)」の考え方を元に政治を進めてきました。エリートの価値観はエリートだけが得をする社会を生み出し、今やアメリカのアッパークラスと庶民の関係は、アヘン戦争の頃のイギリスと中国のように、下層の民を麻薬漬けにして特権階級が肥え太るという構図になっていると。
この記事の筆者は共和党の経済政策アドバイザーで、「ビジョンのある若手」としてJ.D.ヴァンスの名前をあげてます。もうそれだけで吐きそうになる読者も多いことでしょう。コメントはできないようになっています(笑)しかし労働組合の話も出てきますし、左寄りの皆様にも共感できる部分があるのでは。
「気候変動対策よりも生活」というポピュリスト経済政策を冷静に冷静に語り合う必要ありじゃないでしょうか。今や一番の環境危機は世界中で起こっている山火事ですが、焼け死んでもいいから石油を使い続けたいというのが庶民の総意であるならば、せめて「良い暮らし」の夢を見ながら人類絶滅への道を歩いていくしかないのかも。
