3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


大学生の意識と乖離が進む保守回帰政策

今日のピックアップNYT記事:Who Would Want to Go to a College Like This?

大学キャンパスの左傾化に動揺する保守政治家たちが、立法による抑制を試みている。アラバマ州知事は先日、州立大学での「分裂を招くトピック」(ジェンダー、人種差別など)を制限する法案を提出した。公立大学でのDEIイニシアチブを禁止したフロリダ州の法律と同様のものであり、リベラルな考え方を破門にする試みだ。全国に同じ動きがあり、共和党議員が同じような法律を28の州で提案している。

保守に有利な選挙区の仕組みができあがっている州では、保守が進める立法に勝つことは難しい。しかし小中高までの教育とは違い、大学の場合は、学費を払う立場の学生にも強みがある。州政府が学生の価値観と対立するのであれば、別の州の大学に行く、あるいは大学に行かないという選択がある。

大学を選ぶ基準が、教育の質、学費コスト、評判、卒業後の就職状況であることには変わりない。こうした基準以外に、志望校の選択に影響する要素として、保守回帰的な最近の法律に対する学生の反応を調べた調査がある。具体的には、

1)「分裂を招くトピック」の排除 
2)銃携帯の自由
3)妊娠中絶の禁止
4)入学時の積極的差別是正措置の終了

上記4つを取り上げている。4については、ほかの3点とは計測が微妙に異なるのでランキングから除くとして、「銃携帯の自由」「分裂を招くトピックの排除」「中絶禁止」の順番で、学生の懸念度合いが強いということがわかった。

2022年、最高裁はニューヨーク州の銃規制法に違憲判決を下した。この判決がほかの州の銃規制にも影響するのではないかと懸念されている。38%の学生はキャンパス内での銃暴力を恐れていると回答し、調査対象のほぼ80%は、キャンパスでの銃携帯ポリシーが志望校の選択に影響すると回答。このうち、より厳しい銃規制を望む学生と、より緩い銃規制を望む学生の割合は、5:1となっている。

冒頭に言及したアラバマ州の法案はじめ、左翼的と目されるトピックの制限についてはどうか。端的に言うと、学生の大多数は、法による制限を望んでいない。共和党支持の学生でも、61%は大学を選ぶ上で人種やジェンダーなどのトピックに制限がない州の大学を希望しており、民主党支持の学生では83%、無所属では78%となっている。

中絶に関しては、調査対象の71%が志望校の選択に影響すると回答している。性別では女性のほうが男性よりも18%高い。大学が男性だけを募集するわけにはいかないし、中絶を規制する州の大学では、女性と女性の権利を尊重する男性を引き付けることは難しくなるだろう。

キャンパスの左傾化は、共和党支持層の保守反動を引き起こす懸念事項なのかもしれないが、この調査によれば、学生たちの政治観に極端な分裂は見られない。志望校(在籍校)がある州の政治的スタンスを重要視する学生の大部分は、支持政党に関わらず、「より厳しい銃規制、中絶規制の緩和、カリキュラムの自由」を望んでいる、とこの調査は結論づけている。

つまり、「学生を攻撃的な左翼キャンパスから守る」という共和党の主張は、学生にとっては全く的外れな、言ってみれば宇宙人の言葉にしか聞こえないだろう。

大学は政党政治の代理戦争の場ではない。教育は政治的なゲームよりも高邁な理念に基づくべきであり、保守派の大学叩きとメディアの大騒ぎは、今後の人生を模索中の学生にとって、迷惑な話でしかない。

調査データを見る限り、アメリカの学生たちは非常に進歩的であり、公平な精神を持ち、知的な挑戦を恐れていない。政治家も学生を見習ってはどうなのか。

俺的コメント

アメリカの大学生が一番恐れているのは「キャンパスで流れ弾に当たって死ぬこと」なのに、保守政治は銃規制に反対し、思想統制で「学生を守る」と的外れなことを言っている。確かに。しかし、この記事に「過激な左翼」に対する自省的な視点はなく、コメント欄で批判されています。ここ最近パレスチナ解放の学生運動が激化して、警察に逮捕された学生さんが停学処分になるなど、キャンパスが荒れています。警察の出動要請をした学長さんは、右からも左からもボカスカ叩かれているし。この状況は、「今後の人生を模索中の学生にとって、迷惑な話」ではないんでしょうか。

ウチの大学生も親パレスチナ抗議活動を支持していますが、アメリカの大騒ぎが伝染する前に年度が終わったようです。国境の南側の情勢については「キャンパスがデモ騒ぎで閉鎖になって実験とかできなくなったら超困るのでは?」だそうです。USのキャンパスでそんな発言をしたら、ガザで大量に人が死んでいるのに実験の心配?と叩かれるかもしれません。ユダヤ人学生がパレスチナの旗で目を刺されて危うく失明しそうになったというようなニュースを見るにつけ、学生を守りたいという「宇宙人」にも、それなりに愛があるのでは?と思います、大学生の親としては。

ベトナム反戦の学生運動に参加したという読者が、逮捕や停学を恐れずに若者が抗議活動をしたから戦争はなくなった、とコメントしています。だから今の学生も頑張れということなのでしょうか。確かに、学生運動には世の中を変える力があるのでしょう。でも、「若者よ、俺の若い頃みたいに戦え」って、どうなの?年寄りとしては、「自分が大学を管理する立場だったら抗議活動とどう向き合うか」に思いを巡らせるべきなんじゃないでしょうか。



About Me

新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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