3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


サイケデリック医療の現在

今日のピックアップNYT記事:Breathing Their Way to an Altered State

サンフランシスコで開催された、ある呼吸法ワークショップ。アイアスクをして横になり、スピーカーから流れてくる速いペースのビートにあわせ、深い腹式呼吸を続けていく。このエクササイズは、意識のトランス状態を引き起こし、人によっては、生まれる瞬間の恐ろしさが再現されることもあるという。はじめの数分で泣き始める人、何かに憑かれたように四肢を動かす人もいる。

ワークショップの参加者は、ヒッピーでもカルトのメンバーでもない。彼らは、「サイケデリックセラピー」資格をとるために訓練を受けている医療従事者である。神経医学の医師である受講者の一人は、短時間のトレーニングで変性意識(ASC)を経験できるものだろうか、と懐疑的だったが、「マジックマッシュルームの薬効に似たトリップを体験した」という。

LSD幻覚剤などのサイケデリックス薬物は、1950年代から60年代にかけて、医療への応用が熱心に研究されていたが、ニクソン大統領が「麻薬との戦争」を宣言したことにより衰退。しかしドラッグ規制が緩和された近年、サイケデリックス薬への偏見が弱まり、再び注目されることになった。複数の大学がサイケデリックス研究センターを開設し、連邦政府も研究の助成を始めている。

鬱や痛みに対する現在の治療法に限界を感じている医療関係者は多く、代替医療としてサイケデリックスへの期待が高まっている。ある医師は、薬のせいで意識が朦朧としたまま患者が死を迎える従来の緩和ケアに疑問を抱いていた。サイケデリックスが死への恐怖を緩和し、患者が心を強く保ったまま終末期を過ごした、という症例に興味を惹かれ、サイケデリックスセラピーの研修を受けたという。

サイケデリックスの応用には大きな課題がついてまわる。何十年にも渡り禁止されていたために十分な研究がされておらず、知識に欠ける状態で使用すれば治療効果よりも危険が上回る。また、医療とスピリチュアルの堺にある分野なので、誰が治療を指導するのか、どんな資格が必要とされるべきなのか、といった疑問がある。

各地のサイケデリックス治療研究センターは、2016年から1200人の生徒を受け入れてきた。安全な治療法と倫理的なガイドラインを確立し、サイケデリックスを地下からメインストリーム医療へと引き上げる目的で設立された研究センターだが、皆同じ疑問に直面している。「合法ではない治療をどうやって教えるのか?」

サイケデリック医療の先駆者であるスタニスラフ・グロフ博士は、古代インドやシャーマンの手法を元に、薬を使わずに変性意識にアクセスする呼吸法を開発した。この手法は、ギリシャ語で完全性に向かうことを意味する「ホロトロピック」という名前で呼ばれている。ホロトロピック呼吸法が人間の脳と精神状態に及ぼす影響については、まだ十分な研究がなされていない。しかし、昨年のある研究では、「よりよい精神状態との関連が見られる」と、ホロトロピック呼吸法の効果を示唆する結果が発表されている。

グロフ博士は、呼吸法ベースのセッションでも、薬物による「トリップ状態」と同じくらいパワフルな効果があることに驚いた、と述べている。薬物・呼吸法いずれのアプローチでも、サイケデリックセラピーがもたらす変性意識は、人間の苦しみの原因を明らかにし、抗うつ剤などよりも効果があるという。従来の治療は、不快な症状を抑え、サイコセラピーを通じて理性的に苦痛の原因を探ろうとする。しかし、核心となる問題点は、言葉では捉えられない場合が多い。

学者人生の黄昏ともいうべき時期にある92歳のグロフ博士は、サイケデリックセラピーの復興を熱く語る一方で、まだ安全性が確立されていない点を強調。「今日、多くの人がサイケデリックス治療を求めているが、適切な治療ができる専門家が非常に少ない」と警告する。ホロトロピック呼吸法についても、きちんと訓練を受けた専門家の指導のもとに行うべき、としている。

俺的コメント

薬物規制の緩和といえば、カナダではカナビス(大麻)ショップが雨後の筍状態になりました。うちはウーバーイーツも圏外だし、スタバもマックもない田舎だけど、カナビスショップは徒歩圏内にあるんだわ。下手するとコンビニよりも多いかも?こんなに大勢の人が大麻を嗜まれるという事実に、日本人としては、くりびつぎょうてん。日本で大麻グミがニュースになった時、新潟の母に「あんた変なグミ食べてないでしょうね」と聞かれましたが、実は不眠がひどかったときに人に勧められて食べてみました。なんの効果も感じなかったけど。とある知り合いは、虹の橋が近い猫さんに緩和ケアとしてカナビスオイルをあげているそうです。お庭で大麻を育てている(二株まで合法と聞きました)ご近所さんもいるし、ノーマライズされた感がある大麻。

そして次はサイケデリックスの時代が来ると。うつの治療を何年も続けているけどちっとも良くならない、という話を身近に聞きますので、ホリスティック医療に希望があるという話は良いニュースです。しかし合法にすれば世は事もなし、というわけにいかないでしょう。オピオイド危機で「合法に売られたアヘン」の恐ろしさを学んだ北米社会、麻薬劇薬の賢い利用を進めていけるでしょうか。日本の大麻グミの件もそうですが、インターネットっちゅうもんがあるとややこしいよねえ。薬に頼らないでトリップするホロトロピック呼吸についても、大量に検索されているようですが、パニック障害持ちの人が見よう見まねでやると怖いらしいよ。「訓練された医療従事者」の出現を待ちましょう。



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新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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