今日のピックアップNYT記事:The Race Is On to Stop Ozempic Muscle Loss
俺的記事まとめ
糖尿病治療を由来とするダイエット薬の人気が急上昇する中、いかにして減量に伴う筋肉量の低下を防ぐか、という競争が始まっている。
オゼンピックなどの肥満治療薬は、高齢者の場合、普通は数年で進行する「フレイル現象」を数ヶ月で引き起こしてしまうという。特に更年期以降の女性は、筋肉が減るとフレイルや骨粗鬆症になる可能性が高く、疲れやすくなり転倒など怪我のリスクが増す。
肥満治療薬「マンジャロ」「ゼップバウンド」を開発するイーライリリー社では、筋肉量の減少を防ぐ「コンビネーション治療」を研究中だ。これはけして副作用の訴訟対策ではなく、いかに脂肪を減らしながら筋肉を保持するかという課題に取り組んでいる、とイーライリリー社。運動時に分泌されるホルモンを模し、筋肉の代謝と機能を向上させる化合物「アゼラプラグ」を所有するBioAge Labs 社と提携、肥満治療薬ユーザーにおける脂肪と筋肉のバランス最適化を目指している。同社はまた、筋肥大に関わるドラッグを所有するバイオ企業の買収も行なった。
肥満治療で筋肉損失を防ぐ薬については、複数の研究が進められている。今週FDAがゴーサインを出した臨床試験では、高齢者向けの筋量低下治療薬が、肥満治療薬を使用する60歳以上の被験者において、筋肉の保持に役立つかを調べることになっている。ただし、これらの試験で効果が認められたとしても、「筋肉キープ薬」が実用化するまでには、何年もかかるだろう。肥満治療薬を使用する患者は、筋肉を減らさない努力をすべき、と医師らは警告する。
特効薬がない現在、薬物ダイエットによる筋量の低下を防ぐにはどうしたら良いのか?医師の指導は、「タンパク質をとる」「筋トレをする」という、お馴染みの2つの方法に落ち着く。この2つが今、健康業界で新たな商機を生んでいる。アボット社では、オゼンピック等のユーザーをターゲットにしたプロテインシェイクを発売した。配食サービス、栄養士紹介サービスなどのビジネスも、肥満治療薬ユーザーに特化した商品を考案している。
ダイエットアプリのNoomでは、フィットネス動画や「プロテイントラッカー」を含む筋肉保持のためのプログラムを開始。「マッスル・ガード」と銘打ち、肥満治療薬ユーザーのためのパーソナルトレーニングを提供するジムもある。ミネソタ州のあるヘルスクラブでは、筋トレだけでなく、FDAが推奨していない「調合バージョン」の減量ドラッグも使用するパイロットプログラムを企画。今年末までに全国の主要都市に展開していく予定だという。
ワシントン大学で糖尿病を研究するスコット・ヘーガン博士は、「特化したプログラムは役に立つかもしれないが、大部分の人は、毎食プロテインパウダーを摂取したり、激しい筋トレを行う必要はない」と述べている。「週二回の軽い筋トレでも効果がある。」
俺的コメント
痩せ薬レースに出遅れた感のある製薬会社が、オゼンピックに対抗して筋肉キープ剤の開発を鼻息荒く頑張っている、と。ラクラク痩せる薬の次は、ラクラク筋肉を保つ薬かよ…と呆れた人は多いことでしょう。SNS動画の惹句じゃないですけど、エグいほど痩せる薬だそうですから、そりゃ筋肉も落ちるでしょう。普通の高齢者が数年かかるとこ数ヶ月でフレイルになるって、すごい怖い薬だと思うんだけど。
それにしても、オゼンピックユーザーのためのパーソナルトレーニングって、どうよ?健康な体型を維持するための地道な努力が面倒で、または、地道な努力で得られる体型では満足できずにオゼンピックに手を出した人が、結局ジムいって筋トレしなきゃいけないって、なんか笑う。もちろん、本当に糖尿病/肥満治療薬を必要とする人々を笑う意図は全くありません。コメント欄に、更年期で体重増えたら相談してください、と医者にオゼンピックを(暗に)勧められた、という女性の話があります。この方、普段から運動してて、身長165cm体重61kgの普通体型だそうです。本当に肥満治療を必要としている人と、165cmの61kgで痩せたいと思っている人、どっちが真のターゲットなのか?
それはスーパーボウルのコマーシャルを見るとわかるね。全米がテレビに張り付くスーパーボウルのCM枠、莫大な広告費がかかるので有名ですが、ビールとかお菓子とか車とか、「アメリカ人全員」をターゲットにした商品の宣伝が多いです。オゼンピックもしっかり出てたね。つまり、ビールやお菓子の売り込み先と同じ、ユニバーサル消費者層を掴みたいと。スーパーボウルといえばジャンクフードとビールを楽しみながら観戦するのがお決まりですが、只今絶賛飽食中の視聴者に向けてエグいほど痩せるダイエット薬を宣伝するわけね。面白い国だ。
