3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


テイラー・スウィフトとトラビス・ケルシー、トランプ信者の鬱憤を煽る

今日のピックアップNYT記事:Taylor Swift, Travis Kelce and a MAGA Meltdown

アメリカ最大のスポーツの祭典、NFLスーパーボウル。チーフス対49ersという、目新しくもない対戦カードにがっかりしたファンも多いだろう。しかし、今年のスーパーボウルには、目新しい要素がひとつある。チーフスで活躍するトラビス・ケルシー選手の恋人、テイラー・スウィフトの存在だ。このスーパーカップルをめぐり、ドナルド・トランプ狂信派がお得意のトンデモ陰謀論を展開している。

いわく、テイラー・スウィフトは、国防省のシークレット・エージェントである。スウィフト&ケルシーは、民主党プロパガンダのために人為的に作られたカップルである。八百長でチーフスのスーパーボウル進出が仕組まれており、テイラー・スウィフトはハーフタイムショーに出てジョー・バイデンを持ち上げるに違いない、云々。

テイラー・スウィフトは、初期の音楽活動においては、政治色を見せることはなかった。しかし近年は、LGBTQ権利の支持や人種差別反対など、保守派にとって挑戦的な意見をソーシャルメディアで発信。「この国に今でも広くはびこっている人種差別には吐き気を催す」「今後も人権擁護のために戦う候補者に投票する」など、左派寄りの発言をし、2018年の時点でドナルド・トランプに「テイラー・スウィフトの歌は前ほど好きではなくなった」と言われている。テイラー・スウィフト初期のファンは10代が中心だったが、ファン層が投票できる年齢に達し、インスタグラムで2億7900万人という驚異のフォロワー数は、政治的支持ベースとしてMAGA(Make America Great Again = トランプ支持層)に煙たがられる存在になっている。

昨年9月、テイラー・スウィフトは、自らのインスタグラムで選挙に行くようファンに呼びかけている。これを受けて3万5千人が有権者登録を申請、その「非常に強い影響力」にカルフォルニア州知事を驚かせている。またケルシー選手は、ファイザー製薬の新型コロナワクチン、ビールのバドライト(インフルエンサーとしてトランスジェンダーを起用)の広告に出たことにより、以前から右翼の攻撃対象となっていた。

NFLは多様なファンベースを有してはいるが、ワクチン反対を公言する選手を賛賞し、国家演奏時に膝をつく(人種差別への抗議ジェスチャー)選手を中傷するなど、非常に保守的なファンが多いのも事実。また、セクハラ隠蔽など組織的な女性蔑視も指摘されている。「金も力もある女性歌手が、すでに成功しているフットボール選手をさらに高みに押し上げる」という構図は、保守的なジェンダー観の右翼にとっては、プライドが傷つくものだろう。

保守派御用メディアのFOXニュースでは、テイラー・スウィフトの政治的発言、ケルシー選手とファイザー製薬のつながり、”The Eras” ワールドツアーの経済的成功を結びつける憶測を放送。「なぜテイラー・スウィフトがこれほどビッグになれたのか、不思議に思わないだろうか。4年前のNATO会議の際に、国防省が心理戦要員としてテイラー・スウィフトを取り込んでいるのだ。」

先日、チーフスのスーパーボウル進出が決まった試合で、祝福に駆けつけたテイラー・スウィフト。ケルシー選手との抱擁&キス写真が世界中に報道され、保守派勢力は脳卒中の発作にも匹敵するショックを受けたと思われる。2月11日のスーパーボウル当日には、本当にテイラー・スウィフトがバイデン大統領を伴って試合に現れるのではないかと懸念しているようだ。

ホワイトハウスの報道官は、本件に対してコメントを控え、さらに憶測を煽る結果になっている。トランプ前大統領の選挙事務所は、当初はこの騒ぎを無視する意向だったが、その後、テイラー・スウィフトによる支持表明があったところで、バイデン氏の悲惨な現状が救われるとは思えない、コメントしている。

俺的コメント

トランプがいかにお元気かというニュースが続く中、気味の良い話題ですな。アメフトといえば、マッチョの権化のようなスポーツ。ファンベースには右翼がうようよしてそうですよね。女コドモ向けアイドルだったはずのテイラー・スウィフトが、NFL選手よりも金稼いで影響力も持つようになって、右翼的には男の風上にもおけない左向きのアメフト選手とつきあい、危険思想(=人種差別反対とか笑)を広めてるとなれば、そりゃ~ムカつくでしょうよ。しかも、アメリカの伝統的神事とも言うべきスーパーボウルで、全米に向かってバイデン支持を訴えるカモだと?ムキー!!

って感じですかね。ああ、笑いが止まらない!

コメント欄にて、「なぜ、MAGAはいつも怒っているのか」という素朴な疑問が議論されています。「怒りを餌に票田を育て収穫するのがMAGAのビジネスモデルだから」「怒りしか感じる能力がないから」「怒りが快感だから。怒ると気持ちよくなるので、怒る対象はなんでもいい」「トランプが怒れと言うから」「共和党が、自己責任を重んじる党から、自称犠牲者を重んじる党に変わってしまったから」などなど、興味深い意見が述べられています。

「自己責任から自称犠牲者へ」という見方に、なるほどなあ、と思いました。自己責任というワードが大好きだったはずの保守的なおっちゃんたちは今、「俺たちは犠牲者だ!」と怒ることで自分を保っていると。負け組でくすぶってる白人のおっちゃんらが、そもそも負けた理由をつきつめていくと、自己責任ってことになります。それを認めるのはやだよねえ、くやしいよねえ、誰かのせいにしたいよねえ。怒りの矛先を渇望する想像力は、国防省とテイラー・スウィフトの陰謀にまで行き着くんだねえ…ごみん、再び爆笑。



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新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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