今日のピックアップNYT記事:The Word That Undid Claudine Gay
俺的記事まとめ
パレスチナ・イスラエル戦争をめぐり、大学キャンパス内の分断が深まる中、反ユダヤ主義に甘いと批判されていたハーバード大学クローディン・ゲイ学長が辞任した。政治的発言の不手際に加えて論文盗作疑惑が浮上、学者としての資質も取り沙汰されるようになり、ついに辞任に追い込まれた。
振り返ってみると、ゲイ博士を追い詰めたキーワードは「盗作」でも「ジェノサイド」でもなく、「コンテキスト」という一言だ。共和党の議員から、「ユダヤ人のジェノサイドを呼びかける言動は、ハーバード大のハラスメント規則に抵触しないのか」と尋ねられたゲイ学長は、「それはコンテキスト(文脈)による」と答えた。炎上を回避するために使ったであろう曖昧な言葉が、まったく逆効果になり、文脈によってはジェノサイドの呼びかけを認める、とも受け取られる発言になってしまった。ゲイ学長はその後、この発言を謝罪したが、時すでに遅し。彼女の発言は一夜にしてメディアを駆け巡り、エリート学者の鈍感さが批判される形になった。
かねてより政治的右派は、左翼イデオロギーと多様性偏重にアメリカの大学が毒されているという主張を続けてきた。ゲイ博士は、大学の組織的機能不全の象徴として格好の攻撃対象となった。左派にとっては、辞任に追い込まれた学長は、保守勢力との戦いで戦死を遂げた一人ということになるだろう。問題の「コンテキスト発言」を引き出した共和党議員は、これからも米国トップレベルの大学が抱える膿を告発していく、と述べている。
辞職にあたり、ゲイ博士が学内に向けて発表したレターと大学側からのメッセージを見てみよう。両方とも丁寧に言葉を選んで書かれてはいるが、皮肉にも「コンテキスト」が圧倒的に欠落している。ジェノサイド発言についてもガザについても一言も触れておらず、辞職の背景に一体何があったのか、という説明はまったくない。出てくる固有名詞は「ハーバード」のみ。ゲイ博士はハーバード大学への深い愛を、大学側はハーバードという歴史的存在への自分愛を熱く語り、ゲイ博士が、いかに素晴らしい教師であり学者であり指導者であるかを書き連ねている。
「盗作問題」についても、謝罪や説明は一切ない。学究における剽窃のタブーを一年生から徹底的に叩き込んでいるハーバード大が、本件を釈明する言葉を持たず、代わりに綴られているのは、「変化とともに成長し苦難を乗り越え、新しい課題に取り組んできた本学は、知識と真実と研究を通じてより良い世界の実現を目指す」云々という、どこかで聞いたような決まり文句のみ。
彼らのメッセージは、あらゆる偏見やヘイトと戦う、互いの尊厳をリスペクトしながら人類愛を持ち続ける、といった理想論に終始しているが、その理想を本当に達成できると思っているのだろうか。表現の自由とリスペクトは必ずしも両立しないだろうし、偏見の是正は公正さを欠く事態を招きもするだろう。大学が掲げる数々の高邁な理想は、矛盾に満ちている。
しかしこれは、ゲイ博士が創り出した矛盾ではない。結局のところ、彼らの言葉は、大学の理念としてテンプレ的な常套句の羅列である。こんな綺麗事を、誰が信じるというのだろう?それも「文脈による」ということだろうか。
俺的コメント
「盗作疑惑」について。 盗作というと大罪の匂いがしますが、サイテーション(引用)の問題らしいですね。学術論文では参考文献の引用規則が超絶うるさいです。規則に従わないと剽窃と見なされます。しかし乱暴な話、うっかり引用ミスは誤字脱字レベルという見方もあり、どんな立派な研究者であろうと、引用まわりの手抜きは若輩時代に一度や二度は犯しているのでは。いえ、だからって許されるってことじゃないですよ?天下のハーバードの学長が引用ミスを指摘されるのは、そりゃ~赤っ恥でしょうよ。こんな初歩的なミスをやる未熟な学者が、なんで学長なんかやってるの?ってなりますわな。
もともと、ビックリするほど業績が少ない学者さんだったそうです。女性だマイノリティだという属性を持ち上げられ、実力以上の地位につかされたのでしょう。しかし、鬼の首を取ったみたいに引用ミスをあげつらうのも、やってて恥ずかしくないのかね?学長を引き摺り下ろしてドヤ顔の共和党議員も、ハーバード卒。アメリカの知的エリート同士が右と左に分かれて、ジェノサイドという恐ろしい言葉を武器に、中東の悲劇をオカズに罵り合っていると。なんたる不毛!そして大学の公式声明はといえば、何の説明責任も果たさないハーバード自画自賛ポエム(呆)
昔、広報の専門家による「メディアトレーニング」というのを目撃したことがあるんだが、報道対応をするときに、いかに美辞麗句をつらつらと並べたて、人々が知りたい核心を避けながら中身のない話を中身があるように話すか、というテクニックの研修だった。ハーバード大学も辞職学長も、広報の専門家に声明原稿を見てもらったのであろう。きれいごとばっか並べてないで、言論の自由と人道主義の両立を期待される辛さと無力感、暴力と人類愛の表裏一体性がもたらす苦悩について、血ぃ吐く思いで綴ったらどうなのハーバード?俺が代筆してやろうか?
