3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


迷走神経とメンタルヘルスの関係

今日のピックアップNYT記事:This Nerve Influences Nearly Every Internal Organ. Can It Improve Our Mental State, Too?

近年、「迷走神経」という言葉が注目を集めている。脳から腹部へと分布する迷走神経は、不安を鎮め体をリラックスさせる上で重要な役割を果たすという。ソーシャルメディアでは、迷走神経を「整える」「リセットする」系の投稿が人気を集め、TikTokではハッシュタグ#vagusnerveの動画が6400万回も再生されている。このトレンドに目をつけた健康業界は、マッサージオイルやピローミストなど、迷走神経を刺激するという謳い文句の商品を売り出しているが、効果のほどは科学界に認められていない。

そもそも、迷走神経とは何なのだろう?何がすごいのだろう?

迷走神経とは

迷走神経は、脳幹を起点に首の両側で二つの束に分かれ、枝分かれしながら内臓へと広がっていく。身体中のあらゆる臓器に触れ、内臓の働き具合をキャッチして情報を脳に送り、逆に、脳からの情報を体に伝えて、消化、心拍、気分、免疫系などの制御を助けている。12の脳神経の中でも最も長い迷走神経は、人体の情報ハイウェイと呼ばれている。

迷走神経は自律神経のうち主に副交換神経から成り、体を活発にする交感神経とは逆に、休息、消化、鎮静に関与する。1800年代後半、てんかん治療の研究で迷走神経が注目され、この神経を刺激すると気分が向上することがわかった。現在は、迷走神経とメンタルヘルスとの関わりが盛んに研究されている。

今わかっていること

迷走神経を刺激すると、てんかん、糖尿病、難治性うつ、PTSD、炎症性自己免疫疾患(クローン病、関節リウマチなど)などに効果があるという研究結果が報告されている。また、迷走神経へのウィルスの影響がコロナ後遺症を引き起こす可能性も示唆されている。

2000年代初期、治療に反応しない重症うつ病患者の迷走神経を刺激すると効果があるとわかり、その後多くの研究が行われた。2005年、FDAは、難治性うつ病患者の治療用として、人体に埋め込んで迷走神経に電気信号を送るデバイスを認可した。特に治療方法が見つかっていない双極性のうつ病患者にとって、このデバイスは朗報だ。外科手術が高価な上、効果が現れるまでに数ヶ月から一年もの時間がかかるという欠点があり、まだ一般的に広く普及してはいないが、従来的な抗うつ剤などに反応しない患者での効果が期待される。

迷走神経への刺激は、PTSDなどの精神障害にも応用できる可能性がある。PTSDは血液内の炎症反応と関連しており、これは不安をコントロールする脳の回路に影響する。16人の被験者に対し、迷走神経近くの皮膚を電気的に刺激した研究がある。8人には迷走神経刺激治療、8人は偽治療が行われた。迷走神経刺激治療を受けたグループでは、ストレスへの炎症反応が減少し、PTSD症状が和らぐ可能性が示唆された。

この他、患者の体格に合わせて迷走神経への刺激を調整する研究、埋め込まないタイプのデバイスの開発研究なども行われている。

迷走神経の状態を計測することはできる?

迷走神経は非常に複雑であり、直接的に動作状況を計測することは難しい。しかし迷走神経は心臓につながっているので、心拍データから間接的に計測することができる。HRVと呼ばれる心拍間の変動を示す数値が低いと体はストレス状態にあり、HRVが高いと迷走神経が良い状態にあるといえる。糖尿病、心不全、高血圧などはHRVの異常と関連していることがわかっている。

迷走神経を整えるために自分でできることは?

息を止めて顔を冷たい水につけると、心拍が遅くなり血管が収縮する「ダイビング反応」を引き起こす。この方法には鎮静作用があり、不眠を改善するという説がある。氷嚢を胸にあてると不安が落ち着くという人もいる。

ソーシャルメディアで紹介されている上記のようなテクニックは、不安やうつのコントロール方法として科学的に検証されてはいないが、「特に害はないので、試してみる価値はある」と、ある専門家は述べている。ただし、臨床データがない状態ではリスクと効能を適切に計測する術がないので、自己流の治療を試す前に医師に相談すべき、という。マインドフルネス、運動、深呼吸などは、迷走神経の活性化に効果があると専門家も推奨している。

俺的コメント

日本に住んでいた頃は、自律神経という言葉は割とフツーに耳にしたので、一般的な語だと思っていましたが、北米では最近やっと注目されてきたようで。早速、自分でできる「迷走神経マッサージ」なるものを試してみたのですが、よく眠れました。ついでにお腹の調子も良くなった。オーラリングのデータを見たら、マッサージをした翌朝、HRVが右肩上がりになりました。もちろん、マッサージをすれば必ずHRVが高くなるというものではなく、たまたま色々な要因が重なって良いスコアが出たのでしょうけれど。

数年前に不眠になったのをきっかけに、不眠の改善=自律神経の調整に良いと言われているモノはあれもこれもやってみました。ヨガ、ストレッチ、ボディスキャン、深呼吸、瞑想、昼寝、アロマ、プチ断食、などなど。何か新しいことをやるたびに、家族は「あーまた何かマイブームが始まった」と冷めた目で見ていたようですが、不眠は治ったし、日々快適です。

ウチの相棒はストレスを溜めやすく、いつも調子が悪そうなので、「ヨガとか瞑想できみも自律神経を整えたまえよ」と勧めるのですが、遠慮しとく、と断られます。お薬大好き型の西洋人は、「人間の自然な治癒力を活性化させる」系の話に拒否反応を示しますよね、あれは何なんだ。目の前に「不調にヨガ(等)が効いた」実例を見ても、自分では試そうとせず不調を放置する方を選ぶと。逆に向こうは、痛み止めの薬を飲みたがらない東洋人が不思議で仕方がないらしい。

今日の記事によると、ソーシャルメディアで迷走神経ブーム、アカデミックな研究も進んでいるようなので、「ヨガとか胡散臭い」と思うタイプの西洋人は今後は少数派になるかな?おまいらもやっと自律神経の重要性に気づいたか、と思ったら「外科手術で迷走神経を刺激するデバイスを人体に埋め込む」ですと!? さ、さすが西洋医学、発想がそっちの方向に行くのね。いえ、もちろんそれでPTSDやうつの人が助かるのなら、ガンガン行っちゃってください!自分は地道にヨガとかマッサージでセルフケアに努めますです。



About Me

新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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