今日のピックアップNYT記事:Beware the Men Who Double Down
俺的記事まとめ
ルイス・ルビアレス氏がスペインサッカー連盟の会長を辞任した。スペイン代表を優勝に導いたジェニファー・エルモソ選手の口にキスをした件で、世界中から批判されたルビアレス氏。選手たちが同氏のボイコットを表明、FIFAから資格停止処分を受けた後も、全く反省の色を見せなかった。反省するどころか逆切れし、自分は魔女狩りの犠牲者だと主張。
ミソジニスト(女性蔑視者)にはさまざまなタイプがある。女性ジャーナリストへの性的暴行で訴えらえたドナルド・トランプの反応は、アルビレス氏のそれとよく似ていた。このタイプのミソジニストは、悪行の証拠をつきつけられても、恥を知るということがない。なぜか?心の底では、女性は辱めても良いと思っているからだ。彼らにとって、被害者は自分たちと同等の人間ではない。
ルビアレス氏を弁護して、ウッディ・アレンがこんな発言をしている。「別にレイプしたわけじゃなし」「キスしただけでしょう?友達だし、なんでダメなの?」
私は性的暴行を受けた経験がある。
ある日の夕方、私は公園近くの歩道を歩いていた。向こう側から歩いてきた男性が、すれ違いざまに、いきなり私の両胸を鷲掴みにし、そのまま歩き去った。周囲に目撃者はおらず、私はその場に固まってしまった。何が起こったのか、すぐには理解できなかった。次の瞬間、私が感じたのは、恐怖でもなく失望でもなく、怒りだった。男性を追いかけ、顔面を殴ってやりたい衝動に駆られた。しかし痴漢は走り去り、私はそのまま帰宅した。
警察には届けなかった。友達には「おっぱい掴み」の被害にあったと話し、たいしたことではないかのように振る舞った。私は大学時代にレイプされた経験もある。あれに比べたら、笑い話レベルの出来事だと思ったのだ。しかし、公園での事件を初めて友達に話した日、辱めを受けた悔しさがよみがえり、帰宅してから私は泣いた。私の体を、自分の好きにしていいモノのように扱ったあの男。こうしたセクハラ行為は、外傷を残さずとも、女性の精神を深く傷つける。
知性や能力において、女性は男性に劣っていると信じている男性は存在する。中でもたちが悪いのは、告発され反省するどころか、逆切れしてくる男たちだ。彼らにとって、女性は男性の「下位モデル」ですらなく、女性の体は、男性に使われるためだけに存在しているのだ。
ワールドカップでのキス事件のあと、エルモソ選手は「キスされて嫌だった」とコメントしていたが、その後「(キスの件は)大したことではない」と発言、さらにその後「セクハラの被害に遭った」としてルビアレス会長の告訴に踏み切っている。
エルモソ選手の中で、どんな感情が行き来したのか、わかる気がする。痴漢被害にあった私がそうだったように、最初は「大したことではない」と思い込もうとしたのではないだろうか。ショックと怒り、その後にやってくる「問題を矮小化しても何も良いことはない」という理性的な結論。エルモソ選手は当初、ルビアレス会長を擁護するよう圧力をかけられたという。圧力に屈することなく、彼女は告訴に踏み切った。
ルビアレス氏やドナルド・トランプのような男性は、彼らを弁護してくれる人々を周りに侍らせている。「リーダーシップ」やら「特異な能力」やらを世に提供する「力のある男性」は、非常識な行為をしても大目に見るべき、という弁護はよく耳にする。また、女性の体は、ある意味男性の所有物なのだから、少々強引に何かしても許される、と思っている男性もいる。「レイプしたわけじゃなし」発言のウッディ・アレンなどは、これにあたる。
自信満々に女性虐待を正当化するミソジニストの言動は、「女性はどこまで我慢すべきか」という社会的な許容範囲を広げようと挑戦している。特権を利用し、自らの悪行が繰り返し許容される世の中を、彼らは目指している。
俺的コメント:
記事コメント欄で、こんなことを言っている人がいます。ルビアレスにとって、スペイン女子チームの優勝は、選手たちの手柄ではなく、自分の手柄なのである。あのキスは、「優勝杯にキスする行為」であった、と。なかなか言い得て妙な分析です。エルモソ選手のパートナーは女性だそうで、彼女のパートナーが男性であったら、ルビアレスは果たして同じ愚挙に出たであろうか?という憶測もあります。パートナーが見ている前で無理やり口にキスをするというのは、ただでさえゲスの極みですが、レズビアンの女性を「わきまえさせた」ようにも見えるイヤラシさに、全世界が辟易とした事件でありました。
ワールドカップ優勝という歴史的快挙を達成した嬉さのあまり、ついやってしまった、本当に本当にごめんなさい、これからは気をつけます、と反省文でも書いていれば、逆に世界の尊敬を得られたであろうに、「懲りない系」はまったく頭が悪いとしか言いようがない。いや、頭が悪いから懲りないのか。かわいそうなのはルビアレスのお母さんです。「自分の息子は悪くない」、と教会に篭ってハンガーストライキをして、病院送りになったそうですよ。息子がもうちょっとマトモな対応をしていたら、おっかさんをこんな目に遭わさずとも済んだだろうによ。
全世界の「道ゆく女性のおっぱいを掴みたい」と妄想してしまう皆さん、その妄想と女性を深く敬う立派な男性であることは両立します。「反省だけなら猿にもできる」という昭和の名言を覚えていますか。悪気なくセクハラ発言をしてしまったとき、反省しないとどうなるか?せめて猿並みの知性があれば、ルビアレスさんも凋落の憂き目を見なかったのかもしれません。
