3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


2023年夏、華氏100度の海を嘆く

今日のピックアップNYT記事:What It’s Like to Swim in an Ocean That’s 100 Degrees

この夏、世界中から報告される異常な暑さのニュースを聞きながら、気候危機はここまで深刻な状況になっているのかと、耳を疑った。

数週間前に、マイアミの海の温度が華氏95度(摂氏35度)に達したとき、私は戦慄した。言いようのない恐怖を感じながら、私は95度という数字を頭の中で繰り返していた。こんな異常な温度が続くはずがない、と祈るような気持ちで過ごした先月末、マイアミの海水温度はついに100度(摂氏37.8度)に達した。

宇宙からは青い宝石のように見えるという地球。その青い宝石は今、人類の覚悟を超えた災厄に襲われている。確かに私たちは、温暖化についてはこれまで何度も耳にしてきた。ニューヨークシティの大部分がいずれ水に沈むという予想、北極圏でシロクマが絶滅の危機に瀕しているというニュースの陰で、海水の温度上昇については、あまり語られることがなかった。

母なる自然の、最も壮大な姿である海。太古の昔から、人間は海辺に惹かれ、スポーツやレジャーの場として、また癒しの場として、海と深く関わってきた。今、マイアミの海に足を踏み入れると、温水ジャグジーかと錯覚する。爽快感はなく、人間の霊感を刺激する感覚とは程遠い。2023年は、海がレクリエーションの場ではなくなった年として、歴史に刻まれるのかもしれない。

私はこのフロリダの海岸沿いで、海に育まれて大きくなった。浜辺できょうだいたちと水しぶきをあげて笑いころげ、あのブイまで泳ぐ競争、今度はこっちのブイ、次は波乗り、その次は潜りっこと、海での遊びにはきりがなかった。ビーチという絶好の遊び場が裏庭にあり、一日中海に抱かれて過ごし、夜になれば心地よく疲れ果てて眠る、それが私の子供時代だった。

私が9歳のとき、キューバ革命があった。突然、禁じられた島となったキューバを見つけようと、水平線に目をこらした。母は海の向こうを指差して言った。「ハバナはすぐそこだよ。お前のように泳ぎが達者な子は、泳いで行けるかもね。」

後に、35年間で5回にわたる挑戦を経て、私はついにフロリダ・キューバ間を泳ぎ通した。かかった時間は52時間54分。しかしこの挑戦は、現在の海水温度では、到底無理な話だ。運動量からくる体温の上昇とあいまって、あっとうまにオーバーヒート状態になってしまうだろう。どんなに意志が強いスイマーでも、熱中症に打ち勝つことはできない。

もちろん、水温が上昇しているのはフロリダの海だけではない。赤道直下の状況は、さらに深刻だ。メキシコ南部からカリブ海、西インド洋にかけて、世界の海の40%は、気候変動の大きな打撃を受け、6月後半には海洋熱波と見なされる温度に達した。

海洋熱波については、あまり報道されることがない。山火事は毎年のようにニュースになり、家を失った人々、火から逃げ回る動物たちの映像を、私たちは何度も目にしている。一方で、海の生物に共感することは、難しいのかもしれない。

浅海魚の生存に不可欠な珊瑚礁は一晩で死に絶える。海面を覆いつくす魚の死骸、ひっそりと海底に沈んでいくロブスターたちのことを考えてみてほしい。こうした生物たちも、猛り狂う炎に追われ、森の中を逃げまどう動物たちと同じ苦しみを味わっているのだ。

私は、北氷洋を除くすべての大洋で泳いだ経験がある。これまでに何度も、一番好きな大洋は?と聞かれてきた。しかし今日、私は大海原の美しさについて詩的に語る言葉を持たない。ただひたすら、悲しみに打ちひしがれている。欲望の赴くままに、地球を取り返しのつかない状態に追いやった人間とは、なんという愚かな存在なのだろう。

俺的コメント

この記事は、64歳でフロリダ・キューバ間(177km)の遠泳に成功したダイアナ・ナイアドさんによるゲストエッセイです。海を愛するナイアドさんの深い悲しみが伝わってきます。

トライアスリートの友達が今年の夏、メキシコの海で遠泳レースに参加し、「良い冥土の土産になった」と話していました。この夏の地球の様子を見ると、冥土の土産という表現は、大袈裟ではなく的を射た言い方かもしれません。

この夏、山でキャンプをして焚き火を楽しんだ方、海水浴を楽しんだ方、その体験は「今年で最後」になるかもしれません。来年の夏は、海や山でのレジャーはもうできない世界になっているかも。気候危機は、それほど速いスピードで皆の背後に迫っているということです。

ハワイの火事を生き延びた人の体験談をポッドキャストで聴きました。何の前触れもなくやってきた大火災は、わずか数時間の間に、いつもの日常を世界の終末に変えてしまった、と。焼け死ぬか、海に飛び込んで溺れて死ぬかの選択。あまりに恐ろしい話で、最後まで聞くことができませんでした。

「風の谷のナウシカ」を覚えていますか。地平線からやってくる王蟲の大群の地響きを聞いているのが、俺たちの現在の姿です。アニメとの違いは、人々を救ってくれるナウシカは現れないということ。風の谷の婆様のように、心静かに運命を受け入れることができるでしょうか。



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新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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