今日のピックアップNYT記事:Canada offers Lesson in the Economic Toll of Climate Change
俺的記事まとめ
カナダで発生した山火事は、2千万エーカーに広がり、アメリカ国境沿いの都市が煙で覆われる事態を引き起こした。山火事が収束する兆しは見えず、石油・天然ガス・木材の生産、観光業への打撃のほか、健康被害による医療システムへの負担は、甚大になると予想される。気候変動に伴い世界中で未曾有の自然災害が相次ぐ中、環境危機を象徴する不安がカナダにも広がっている。
気候変動の影響を予測する初期の研究では、カナダは赤道近くの国に比べ恵まれた環境にあると思われていた。温暖化により北国の農耕可能期間が長くなり、冬の厳しさは緩み、居住地としてより魅力的な国になるという予想だ。しかし実際には、氷害、豪雨、熱波、大西洋沿岸北部ではめったになかったハリケーンの被害など、気候変動は実に不安定な形でカナダに顕現しており、たとえ温暖化による恩恵があったとしても、すべて吹き飛んでしまうだろう。
想像以上に早く、不規則に進行している気候変動のコストを予想するのは難しい。あえて行われた試算によると、2025年には気候変動のコストは250億カナダドルにのぼり、経済成長を半減させるという。21世紀半ばまでには、気温の上昇とともに労働生産性が下がり、多くの職が失われ、人間の寿命は短くなり、永久凍土が融けつつある北部で道路や建物などインフラの破損が進むなど多くの問題が発生し、対応するための増税も必至となる。
山火事シーズンはあと数ヶ月続くので、この夏の火事のコストはまだ不明だが、カナダの第三四半期経済成長に影を落とすと考えられる。すでに下降中だったカナダ経済にとっては泣き面に蜂だが、現在の山火事が大都市への流通や送電に影響を及ぼすことになったら、事態はさらに深刻になるだろう。
当然ながら林業には影響が発生している。火災避難で製材所の稼働が制限された上、山火事のあとでは木材は減産されるのが一般的だ。また、これまで冬になると死滅した害虫が、温暖化で越冬できるようになったという問題も発生している。カナダでは住宅不足が続いており、今後予想される木材の払底は、住宅不足の問題に拍車をかけ、移民の受け入れを進める政策にも影響するだろう。
書き入れ時の夏を迎えた観光業もまた、山火事の打撃を被っている。山火事から遠く離れた場所でも、道路が遮断されたために、ホエールウォッチングなどの観光に影響が出ている。バンクーバー島のあるホテルの6月の稼働率は、85パーセントから20パーセントに落ち込んだという。通常、観光客相手のビジネスは夏季スタッフに寮を提供するが、客が来なければ働き手は他所に仕事を求めて去り、スタッフがいなければ、夏後半にかけて十分なサービスを提供できなくなる。
2009年以前、カナダにおける保険会社の1年あたりの損失は、平均4億5千万カナダドル程度だったが、今では20億を超すのが普通になっている。何度か大損害を計上した大手の再保険会社がカナダ市場から撤退し、保険料の値上がりを招いている。熱波や煙害による健康被害が増えるにつれ、生命保険への影響も避けられないだろう。
俺的コメント
冬になると気温がマイナス30度にもなるカナダ。温暖化でカナダはもっと住みやすくなるという「予想」の能天気ぶりはどうだ。しかし俺も数年前までは、カナダは寒いだけで自然災害が少ない国だと思っていました。最近は、災害がじわじわと身近に迫ってきているのを肌で感じます。たとえばこの夏の山火事。ケベック州の山奥で燃えている火事の煙が流れ込んできて、家の中まで臭いし、夏なのに外で遊べない事態に。冬の氷害もひどかった。氷害は、寒い時期に突然気温が上がって起こります。雨が一瞬で氷り、氷の重みで樹木や電線が引き倒され、酷いと何日も停電が続きます。100年以上かけてこんなに脆く倒れてしまう電線インフラを張り巡らしてしまい、これからどうしろと…
数年前に地元で大きな洪水がありました。ウォーターフロントの家を失った人が、また同じ場所に家を建て直したという話を聞いて、懲りないというかチャレンジャーというか、吃驚。水辺に家を建てるのは、カナダ人にとって人生最大の夢だったりするので、揺るがしがたい価値があるのはわかります。しかし、これからガンガン水位が上がる中、無謀じゃないでしょうか?まあ無謀だと思ってない能天気さから水辺に再建したわけで、そりゃ保険会社としては面倒見きれんという感じでしょう。
いつまでもウォーターフロントのマイホームに執着する年寄りにつけるクスリはなく、希望があるとしたら、次世代の勇気と叡智です。知人のお嬢様が、この夏大学を卒業されました。非常に優秀な方で、どんな道に進まれるのかと楽しみにしていたのですが、山火事の消防士になるそうです。彼女によると「今そこにある危機」の最たるものが山火事であると。その話を聞いて、後光がさして見えたっけね。大昔に日本の卒業式で歌った「若者たち」の歌詞を思い出しました。「君の行く道は果てしなく遠いが希望へと続く」というアレです。立ち上がる若者たちに敬礼いたします。
