3分で読めるNYタイムズ記事まとめ

俺的アンテナに引っかかったニューヨークタイムズの面白記事を、個人的な感想と共に日本語で紹介しています。記事翻訳ではありません!


インフルエンサーの逆脱サラ、目指すは普通の会社員

今日のピックアップNYT記事:Is There Life After Influencing?

俺的記事まとめ

かつてインフルエンサーとして、年間30万ドル以上を稼いでいたリー・ティルマン。インスタグラムのフォロワー数は40万人、ブランド契約のPR投稿は、一件2万ドルに上ることもあった。会社員として働きはじめた初日、「インフルエンサーをやめてデスクワークに縛られる生活を選ぶなんて」と、同僚に驚かれたという。ティルマンいわく、「会社員が奴隷のような働き方だと思っているみたいだけど、鎖に繋がれているのはインフルエンサーの方。普通の会社員は、定時になったら仕事しなくていいんだよ?」

過去10年以上に渡り、ソーシャルメディアは、経験もコネもない素人が富と名声を得られる可能性を提供してきた。特に何かの才能がなくても、多少の運とコツコツ投稿を続ける根気があれば、有名になり高収入を得るのも夢ではない。2019年の調査によると、Z世代およびミレニアル世代の54%は、「インフルエンサーになることに興味がある」という。

一方、大金を稼いでいるインフルエンサーが、次々に引退するという現象が続いている。ソーシャルメディアがメンタル面に及ぼす悪影響は良く知られているが、実際に稼いでいるクリエイターが直面する精神的プレッシャーは、ユーザーが感じる不安よりずっと過酷なものだ。

ティルマンが炎上を経験したのは2018年のこと。ソーシャルメディアにおける成功の頂点に達していた彼女は、各地でのイベントを企画。500ドルのチケット価格に、ファンを搾取しているという批判が殺到した。ティルマンの精神状態は悪化し、外出もままならなくなった。インフルエンサーを続けていくことに疑問を感じながらも投稿は続けていたので、2019年に突然SNSから姿を消した際には、ファンにもアンチにも驚かれた。5ヶ月後、インスタグラムに復帰したティルマンは、摂食障害の治療を受けていたことを告白、スポンサー契約は減らし、全盛期とは違うコンテンツを模索したが、どれも長続きしなかった。

ティルマンは、彼女と同じくインフルエンサー稼業から足を洗いたいインフルエンサーのためのワークショップを開いている。「普通の人と同じように」SNSを使えるように、インターネットとの関係をリセットするのが趣旨であり、本業とバランスをとりながら副業としてインフルエンサーをやりたい人は対象ではないという。

ティルマンのワークショップに参加した一人は、かつてシカゴの広告大手で働いていた。個人のインスタグラムでインフルエンサーを目指し、投稿ひとつで一ヶ月の家賃が払えるまでに成功した。しかし安定とは無縁であり、人に羨まれても、ありがたみを感じられなかった。けしてリラックスできることがなく、健康保険や有給がもらえる会社員に戻り、やっと休暇中にSNSの数字を心配せずに済むようになった。彼女の妹もSNSで大量のフォロワーを持つインフルエンサーであり、高校を中退して以来、同じことを続けている。一生これを続けていけるのだろうか?と悩む妹の姿を見て、「ああならなくてよかった」という。

インフルエンサーの燃え尽き現象による転向や廃業は、今後増えていくと予想される。動画・写真編集、画像管理、クライシスコミュニケーション、迅速な対応といったインフルエンサーのスキルは、PR代理店や広告会社への転向に有利であり、ティルマンのワークショップも、インフルエンサーとしての経験をいかに就活に活かすかを扱っている。

インフルエンサーがインフルエンサーを辞める方法のインフルエンサーとして儲けるとは笑止千万、とティルマンを揶揄する声もあるが、本人はワークショップが金儲けのためのものだと思われるのは心外だという。「私は退屈な仕事がしたいの!」と記者に語るティルマン。今の一言、記事に入れてね?と念を押すのも忘れない。注目コンテンツの出し方に目が効くところは、面目躍如というところだ。

俺的コメント

皆様の身近にも、ソーシャルメディア長者がいらっしゃるのではないでしょうか。長者とまでは言わなくても、SNS副業でお小遣いを稼いでいる人をご存知のはず。そして、稼げるようになろうと、面白くもないコンテンツを毎日勤勉に捻り出している人は、もっと多いはず。ユーチューバーの「炎上・休業・再開」も見慣れたし、かつてはエンターテイメントバリューがあった炎上そのものがオワコンとなりぬ。俺なんか「オワコン」という言葉を2020年代になってから知ったという、存在自体がオワコンの年寄りなので、ソーシャルメディアについて語る資格もありません。インターネットは10年が一世紀なんですね。

ウチの相棒はインターネット黎明期からITの会社にいるくせにフェイスブックのアカウントすら持ったことがなくて、「掲示板」の時代から時間が止まっているんだけどよ、「ザッカーバーグに搾取されたことがない」のが自慢(そんなことがあり得るのか?)。実は俺も90年代IT企業入社組ですから、インターネットデビューは早かったはずなんです。あの頃から真面目にブログを書いていれば今頃左団扇だったのに!で、相棒に30年前に戻れるとしたらどうする?って聞いてみたんだよね。「ゴールドラッシュが始まる前にSNSで儲ける」みたいなタラレバ凡人とは違って、「公務員を目指す」だそうです。何気に時代の先端を行っているな?

「インフルエンサーをやめてサラリーマンになるための講座」がニュースになる時代に、「サラリーマンをやめてインフルエンサーになるための講座」に金払ってちゃダメですよ。最初からサラリーマンを目指しなさい。あ、勉強嫌いな高校生に「インフルエンサーになれば」って言ったばかりだ俺。



About Me

新潟出身、カナダ在住。英語 -> 日本語 クリエイティブコンテンツ周辺のお仕事を請け負っています。

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