今日のピックアップNYT記事:Fight over Retirement in France is a Question of Identity
俺的記事まとめ
心おきなく趣味や旅行を楽しんだり、可愛い孫と遊んだり、自由に充実した毎日を過ごせる人生の昼下がり。それがフランス人が思い描くリタイア生活だ。待望のリタイア生活のスタートを62歳から64歳に引き上げるフランスの年金改革案は、国民の逆鱗に触れ、大規模なデモ行動が全国に広がった。
第二次大戦直後、死よりも先に退職を迎えるフランス人の割合は全体の3分の1に過ぎず、当時の年金は最終給料の20%あまり。この世を去るまでの年金受給期間も、数年間と短かった。平均寿命が大幅に伸びた現在、平均的なフランス人は、人生のおよそ4分の1をリタイア生活者として過ごしている。2021年時点で、65歳まで生きた人間は、あと11年から12年の健康寿命を期待できるという。
フランス人にとって退職後の人生は、「死を迎えるまでの数年の猶予期間」ではなく、人生で最も自由で充実した時間として大切にされている。たとえば、20年間タバコと新聞を売って生計をたててきたカトリーヌ62歳は、旅行や外食、観劇を楽しむ生活に十分な年金を受給しており、「今までできなかったことが、ついにできるようになった」と、引退生活を謳歌している。最終給与のおよそ75%を年金として受け取るフランスの高齢者は、一般人口よりも豊かであり、リタイア層の貧困率は4.4%と、OECD諸国の中でも極めて低い。
大戦後に制定されたフランスの年金制度は、働き手世代が高齢人口の年金を負担するという、世代間が争うことのない相互依存を意図していた。しかし人口の高齢化が進む中、若い就労人口が年金世代を支えきれなくなっている。このままでは経済的に立ち行かないと政府は訴えるが、引退年齢を引き上げるフランスの年金改革案は、国民の圧倒的な反対にあっている。
仕事よりもプライベートを重視する文化が特に際立つフランスでは、年金改革は労働者の権利に関わる問題だ。長期に渡る良質なリタイア生活を国が約束してくれるからこそ、過酷な労働や低賃金にも耐えられるという意識があり、年金改革は労働者への裏切りとも捉えられる。ただし、これは「仕事が過酷」という単純な問題ではない。過去20年に渡り、一貫してフランス人の大部分は、「現在の仕事に満足している」が、「一刻も早く引退したい」と考えているという。
年金改革への抵抗は、社会福祉を誇りとする国民性とも関係があるだろう。フランスの社会保障制度は、国際社会での大国ステータスをアメリカに奪われた時代に整備された。アメリカほどの国力はないが、フランスは世界一の社会保障に多額の金をかけている、という自負。フランス人にとって、年金受給年齢の引き上げは、国民的プライドに関わる一大事でもあるのだろう。
俺的コメント
退職したタバコ屋のおばちゃん62歳が、旅行・観劇三昧というくだりを読みまして、なんてブラボーな社会だろうと思いつつ、「それって持続可能なわけないべ?」とも感じました。
それにしても、「高齢者の集団自決」てな過激なアイデアが出る国とは、全然違いますねフランス。中高年だけが既得権益死守すべしって戦っているわけでもなさそうだし。俺の新潟の婆さんは、元気に99歳まで生きたのですが、よく「早くお迎えがきてほしい。みんなに迷惑かけたくない」と言っていました。姥捨てとか高齢者の集団自決とか、若造が言ったらアレですけど、「社会に迷惑をかけないこと」に美意識を感じる日本の年寄りは多いのでは。フランス人のように堂々と「国が悠々自適な老後を保障しろ」くらい言ってもいいと思いますが、近未来の破綻が目に見えているシステムを絶対に改革するなというのも、「一体どうしろと?」な話ではあります。
あと、アメリカに対するコンプレックスを社会保障マウントで慰めるという話。カナダもちょっとそんな感じあるかも。アメリカと違って俺らには医療保障がある!社会としてはカナダの方がアメリカよりもレベル高い!という主張を、ちょっと前まではよく耳にした気がしますが、最近あまり聞かなくなりました。自慢の医療システムが崩壊気味なせいでしょうか。
自分が歳をとったせいもあるかもです。俺が留学でカナダに入国した当時、当然ながら、まわりは若者ばかりでした。若者たちも大学を出て20年、税金をこれでもかと搾り取られるアッパーミドル中年に成長、「こんなに税金払っているのに、なんでこの国にはこんなに金がないんだ!!」という嘆きを耳にします。年金なぞハナから当てにせずに老後に備えている人が多いですが、それはそれで「ビンボーは自己責任」的な考えを助長しそうだし、良くないのかも。フランスの若者は、「年金なんて諦めてますけど」とはならないのでしょうか。
