今日のピックアップNYT記事:The Digital Workplace is Designed to Bring You Down
俺的記事まとめ:
デジタル化の前に比べて、頭脳労働者の生産性は本当に上がったのだろうか?
職場でのコンピューター導入黎明期。草稿を文書にするタイピスト、スケジュール管理を行う秘書などの、頭脳労働者の「雑用事務」を担っていた仕事が不要になった。パソコンの登場により、専門の事務方に頼らずとも、一人一人が短時間で雑用をこなせるようになったからだ。ただし、雑用に割く時間は、人に頼らなくなった分、増えた。つまり、頭脳労働者一人当たりの生産性は、雑用が増えた分、落ちたのである。その落ちた生産性をうめるべく、会社はより多くの頭脳労働スタッフを雇うわけだが、頭脳労働スタッフ一人あたりの人件費は、パソコンに取って代わられた雑務スタッフの人件費よりも高いのである。
時は進み、仕事のためのデジタルツールは、百花繚乱時代を迎える。Eメール、メッセージツール、会議ツール、スケジュールツール、ありとあらゆる「効率化ツール」の操作に時間と注意を取られ、効率よく仕事ができているという実感が得られない状況が発生。ここでのキーワードは「コンテキストシフト」である。例えば、仕事中にブラウザのタブを巡回したり、絶え間なくメールチェックをしたり、コラボツールのメッセージに応答したり、注意の向く先が変わる(シフト)こと。作業のアウトプットに最も重要な「人間の集中力」、その最大の敵がコンテキストシフトである。
デジタルツールに起因するコンテキストシフトが増えすぎた結果、頭脳労働者の生産性は落ちている。“Slow Productivity”(スローな効率)という、一見矛盾する概念について執筆中のCal Newportによると、今どきの頭脳労働者が生産性を上げるには、「よくばらずに」「自然なペースで」「品質第一」で仕事をするのが大事だという。
NYTのインタビューで、「自動車があるのに、馬車の時代に戻れということか」と問われた同氏は、こう答えている。「自動車が発明されたあと、誰でも好き勝手に車を走らせて良いものではなく、交通法や車道の整備が必要だと世の中が理解するまで、時間がかかっている。自動車に限らず、ディスラプティブなテクノロジーが登場した後には、最適な応用形態が現れるまでの調整期間が発生する。」デジタルツールと頭脳労働の効率性について、最適解が出るまでにはあと一世代かかりそうだ。
俺的コメント:
Slow Productivity、面白そう。ちょっと前に読んだ Hyper Focus とかぶる内容ではないかと思われる。iPhoneのFocus設定導入をみてもわかるけど、世の中は「コンテキストシフト多すぎ」の調整時代に入った感あり?ディスラプティブテクノロジーの最適化策は、「あとから考えると、当たり前のこと」なのに、実装にえらい時間がかかると、NYTの記事に例が出ていて面白い。
会社員時代に、「目の前の仕事に集中すること」がいかに大事かってセミナーを受けさせられた。メールやら会議やら話しかけてくる人やら、仕事の邪魔をしてくるものを無視して「今そこにある仕事」にフォーカスすべし、航空管制官は一回に一機しか着陸させない、管制官になったつもりで常にひとつのことに集中せよ、と。あれは今思うと、コンテキストシフトを減らせってことだったわけね。「1度に1つのことにフォーカス」は、最終的にはマルチタスクよりも効率が良いということですかね?
当時は「会議やらメールやら無視してたら査定に響くじゃないですか!」と思ったものです。自分的にクソどうでもいい会議・メールはガン無視すべき、っていうのが、「あとから考えると当たり前のこと」に該当するのかもしれません。でも、自分的にはクソどうでもいい会議が、同僚Aさんにとっては、一球一魂に値する一大事なんで、どうしても俺に出席してほしい件だったら?どうするよ?
